FC2ブログ
エイジア・ベイコク・ベース


猪木寛至に戻るとき

Category: プロレスの生む物語   Tags: プロレス  
2021-04-10.png

ここ数年は自分がどんなふうに年を取るかどうかをよく考える。ポピュラーカルチャーに絡んだ仕事を重ねていくと、いつまでも20代や30代のイメージのままの人たちをたくさん目にすることになる。まるで年を取る事実を見ないものとするかのように、ずっと若い彼らを美しくも惨めとも言えないまま眺め、テキストを書くことは少なくない。

これはアイドルだとか、ミュージシャンだとか人前に出る職業に限らなくて、もくもくとスタジオで作品を生み出す人たちだってそうだ。事実、いまヒットしてるエヴァンゲリオンなんて監督は60代を過ぎているのに「大人になった、あるいはそうではないか」みたいな批評が溢れかえっていた。自分よりはるかに年を重ねている人たちが作品解釈のテーマをそう考えてしまう姿は、批評の内容以前にやはりこれから年を取ることがいったいどういうことかを考えるのに十分だった。

そんなことを思いながらいつものようにYoutubeを開くと、考えもしなかったところから “年を取ること”について示唆を与える映像が目に入った。アントニオ猪木の現在である。

あまりにも大きな人物ゆえに、むしろ目にしていなかったところからポピュラーカルチャーにおける加齢の現実が鋭利に突きつけられているように思えた。

Continue »

スポンサーサイト



テーマ : プロレス    ジャンル : スポーツ

歴史の終焉、を完全には描き切れなかった『2000年の桜庭和志』書評

Category: ウェブ線上の批評   Tags: ---
Sakuraba1.jpg

ある歴史が死んだことを認めるのにどうやら20年前後はかかるようだ。

プロレスが最強の格闘技、というコピーによって、かつて空手と絡んだり、ボクシングと絡んだりしながら興行を盛り上げていった歴史は、いま振り返れば90年代の半ばにすでに余命が決まっており、2000年代に入ったときには間違いなく死んだ。

歴史が死ぬとは。ここでは「ある価値観や慣習が死ぬ」ことを指す。新日本vsUインターの対抗戦や、高田延彦vsヒクソン・グレイシーの無残な結果のほかにも、アントニオ猪木が引退し、ジャイアント馬場が逝去した数々をあげるだけでも歴史の死を認めるのに十分なように思える。だけど多くの人はそれでも歴史が死んだことを認められず、かつての価値観や慣習を持ち出してしまう。

2000年代の格闘技バブルは、MMAやK-1といったまったく新しいジャンルを広く世間に浸透させたものだと思い込んでいた。しかし実際には昭和から続くある歴史をリアルファイトによって華々しく終わらせたに過ぎなかった。バブルが弾けたとき、ほとんど何も残らなかった。

柳澤健氏の『2000年の桜庭和志』は筆者自身が語るように、『1976年のアントニオ猪木』から始まったシリーズの最終章として書かれたものだ。一連のシリーズは日本のプロレスと格闘技について、本来まったく違うものにも関わらず、なぜここまでの熱狂を生んだのかの歴史を追いかけながら、虚飾に彩られた歴史を明らかにしていくカタルシスをもたらすものだった。

つまり2007年から13年をかけて、昭和から続くある歴史の死を描き続けていたと思う。言いかえれば、ある特定の価値観を持った社会や、コミュニティの歴史が、どこかの段階で完全に死んでしまう過程がまとめられている。見方によっては普遍性を持った価値もあると思う。

何のジャンルでも、絶対だと思い込んでいたり、快いと感じていたはずの価値が時代のどこかで死ぬ瞬間がある。自分が書いている他のジャンルでもそうだ。ビデオゲームでもアニメーションでも、日本映画でも間違いなく歴史の死は存在する(もちろんサブカルチャーだけの話ではない)。しかしプロレスや格闘技の場合は、他のジャンルと比べてあまりにも歴史の死に方が鮮烈なことが多く、歴史の死を認められない人たちの惨めさも深い。

柳澤健氏の一連のシリーズは、プロレスや格闘技のある価値観や慣習が死んだ事実を見せ続けてきた。だが最終章である『2000年の桜庭和志』は、歴史の死を完全に突きつける掘り下げに欠けており、格闘技で例えるならば弱った相手を仕留めそこない、判定に入ってしまったのような読後感が残る。ではその掘り下げとは何か? それを書いていこうと思う。

Continue »

マークの残酷さ

Category: ウェブ線上の批評   Tags: ---
かつて90年代の終わりから2000年代のはじめ、まだMMAや立ち技とプロレスは境目なく見られていた。しかしプロレスを格闘技として信じうるものと見るには限界があり、その慣習を覆そうとする言説があった。

その言説は、もはや格闘技のように信じうるものというプロレスが時代にも合わなくなり、いわばメタな楽しみ方を提示しようとしていた。アティチュード路線のWWEが活況を呈していたことを参考に内幕を理解したうえで、各団体が打ち出していくことを楽しむみたいな意図だったと思う。

言説で大きなもののひとつは、プロレスを捉える観客のレベルを説明する言葉だった。勝敗や試合展開など決められているプロレスを、本当の試合だと思い、本当のストーリーだと捉える層をマークというそうだ

対照的にプロレスの内幕をすべて理解している層をスマートという。この層は関係者に関わるレベルでもあり、わずかしかいない。少し賢しらな観客でも、結局は内幕のすべてを理解することはできないから、団体が提示したものを想像するまでに留まる。そうした層はマークとスマートの中間として、シュマークと呼ばれていた。

あれから20年が経ち、プロレスとMMA、立ち技もまったく別物と認識が変わった。いま自分はなんとなくみんなエンターテインメントを見るときにはそのまま捉えたりはせず、一歩引いたうえで楽しんでいるものではないかと思っていた。むしろ、“半端に内幕を想像するマーク”であるシュマークの悪さについて考えるほうかもしれない。少しものをわかっているけど、本当の裏側はわからないマニアがジャンルを滅ぼしてしまうみたいなことだ。

でもそれは自分の周りがそうした人たちばかりだからそう感じるだけで、実際にはマークの残酷さが広がっている現実をあらためて感じさせる出来事があった。木村花選手の逝去だった。

Continue »

MMAファイターがプロレスに上がる時代からぼんやりと考える魔界俱楽部の再評価

Category: プロレスの生む物語   Tags: ---


ロンダ・ラウジーがそれなりにWWEに適応し、少し前にケイン・ヴェラスケスがメキシコのプロレス団体AAAに出場したかと思えば、なんとWWEにてブロック・レスナーへ(プロレスらしい)パウンドを見舞うという、トップクラスのMMAファイターがプロレスに上がることが珍しくなくなった。

昔みたいに一時期だけ、しょっきりをやるみたいに登場するのではなく、ロンダやヴェラスケスの動きを見る限りまっとうなトレーナーが付いていることは確かだし、プロレスの枠内でMMAらしさを表現させる構成も確かに見える。これは向こうの出来事だけではなく、日本でも起きていることで、パンクラスの川村亮がいまロッキー川村としてノアに上がっていたり、BJJのヘビー級として活躍し、MMAファイターでもあったシュレック関根も全日本プロレスに参戦していたりする。

時は流れ、MMAとプロレスの違いが明確になった時代に、MMAファイターのキャリアのひとつとしてプロレスがあらためて登場している時代、ふとおもいだすのは魔界俱楽部のことだった。プロレスとMMAは同じようなものだとされ、漠然としていた暗黒時代の新日本プロレスで組まれたユニットは、今思えば一番うまく格闘家枠を使えていたような気がする。

Continue »

テーマ : プロレス    ジャンル : スポーツ

いい年をした観客なので幻影は怖いよ、面白いから

Category: MMA   Tags: ---
朝倉海が堀口恭司に勝利したあとで、堀口が29歳の誕生日を迎えたことをツイートしているのを見た。そうか、日本のMMAでPRIDE武士道世代から代替わりして、最初から格闘技バブルが終わっていたころから飛躍してきた世代の選手も30代に差し掛かっているんだ、と気づいた。

その世代は最初から幻影がないはずだった。(メジャー興行を軸に言えば)プロレスから格闘技イベントに至る長い幻影がなくなり、MMAがほぼ完結した競技として見られていて、UFCが最高の場所という世代。堀口恭司や石渡伸太郎、 扇久保博正、佐々木憂流迦に石原夜叉坊、そして(最近はなかなか試合に恵まれないが)田中路教、元谷友貴たちがそうだろう。彼らの世代がRIZINに上がることは、特別な幻影がなくとも第一線の選手が活躍できる時代になったことを意味しているのだと思っていた。

Continue »

テーマ : 格闘技    ジャンル : スポーツ

プロフィール

EAB/葛西 祝

Author:EAB/葛西 祝
ジャンル複合ライティング業者

人気ブログランキングへ
公式サイトはこちらから。これまでに書いたものの実績をまとめています
mail: kyukakukaizoudo@gmail.com

人気ブログランキングへ

ビデオゲームというフィルターから俯瞰する、現代エンターテインメント総合批評
「GAME・SCOPE・SIZE」もやっております。ゲームの他に映画・アニメ・小説なども取り扱っており、興味があればこちらにも。

人気ブログランキングへ


ひっそりとド偏見アニメネタレビュー「14ー21歳のセックスか戦争を知ったガキのモード」「もスタートしましたので、妙に少なくない格闘技ファンとアニメファン兼用の方はこちらもよろしくお願いします。

TweetCasting

ツイキャス・LIVE放送中はこちらからでも視聴できます



 
検索フォーム