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エイジア・ベイコク・ベース

葛西祝による格闘技にまつわるテキスト


8月の光

Category: 格闘周辺時評   Tags: ボクシング  MMA  

廃墟は蒸しております。昔のプロレスや新興の格闘技イベントはボクシングやら柔道やらの社会的に評価の決まっている・ジャンルの確立されている格闘技のチャンピオンやメダリストをなんとか交渉してリングに上げ、そして負かしていくことで食い物にしてきた。その流れはRIZINが山本美憂をMMAに転向させることにみられるように、今も続いている。

国内ではついにプロレスの大興行みたいな価値以上のことにはならなかった。しかし、すくなくとも興行と競技環境のバランスが整ったUFCの土壌からはどうなんだろうか。競技環境が最大の格闘技イベントとはいえ、定期的にジェームストニーだとかをオクタゴンに呼び寄せたりしていたり、それひとつをとって「UFCは競技じゃない」みたいに言うのも一部にはいたようだったが。(ものすごく卑屈で頭のわるいヴィルなんとかってのはまだ生きてるのか 少なくともネットの言説中で絶命していればもんくはなにもない)

コナー・マクレガーとメイウェザーがボクシングでの試合が決定した。これは結局異種格闘技戦イベントの亜種なのだけどその味わいがいくぶんとねじれてる感じをうける。引退を発表したメイウェザーをひっぱりだし、現役のMMAのレインメーカーたるマクレガーが相まみえるというのはこれまでの異種格闘技イベントの構図そのままだ。基本ボクシングやら柔道のトップが一線を退いた段階で、現役の新興格闘技のトップが迎えるというやつ。

しかしここで相手の土壌であるボクシングのルールで向かうということが、なんだか今年最大の異種格闘技戦という意匠をややこしくしてる。マクレガーが類まれな打撃技術にて適正階級よりも上の選手を撃破してきたことを根拠にして、今回のような無茶なマッチメイクにまでたどり着いたあたりがポイントにある。これまでの異種格闘技興行は柔道やボクシングの本物を、本物の技術が使えないルールに挙げて負かすというのが基本なのだけれど、本物の舞台のルールで本物の技術を持つやつと相まみえるのである。歴史を振り返るとプロレス側MMA側のひとがちゃんと相手側の正式なルールで対戦なんてけっこうあるけど、そんな正統な試みは興行的にそれほど評価されたりしてなかったかもな、とも。

ことは格闘技のメインカルチャー(ここでは柔道レスリングボクシング まあプロアマの境界でいうと雑なくくりだけど)をサブカルチャーが食らいにいく構図のねじれ方の話だ。ほとんどの団体はサブカルをなんとか意味づけようとメインの価値をかっぱらって貶めることで興行にするんだけど、UFCはサブをメインにしようとなんとかしているほとんど唯一の団体であり、すでに競技能力的にもトップのそれは、もともとの競技のそれと遜色ないギリギリのところにまで来ている。マクレガーの挑発と競技能力がもたらした現実は、完全にサブからスタートしたMMAがメインカルチャーと闘う構図の新しい形である。




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テーマ : 格闘技    ジャンル : スポーツ

村田諒太のプロフェッショナリズム

Category: P・M・BOXING   Tags: ボクシング  
「村田諒太」の画像検索結果

 廃墟なのに5月から暑いです。待望の村田諒太WBA世界戦の判定が話題になってる。例によってプロ格闘技で何度も見てきたスプリット判定のモヤモヤする感じそのままだったんで、いまさら判定の是非を問う気もない。選出されたジャッジが村田に向かなかったという運の悪いものだった、というのが簡単な結論になってしまう。

 とはいえ、MMAではなく注目度の高い国内のボクシングなのでこうした感想もやけに目立った。「ボクシングが判定基準を明確にしなければ、まともなスポーツじゃない」みたいな意見。この意見だって何度も観てきたんだけど、それが村田諒太の関わる試合に言われるのだとすると話はいささか変わって聞こえる。

 それは彼が「判定基準がかなり明確な」アマチュアボクシングのエリートだからだ。もうプロになって何年も経つけれど、プロアマの跨ぎ方の話に繋がるというか。今更ながらところがプロボクシングというのはもちろん興行であり、極端な話KOというスペクタクルをトップとして、どこかしらで試合の中でスペクタクルを生むことが優先されているはず。判定というのは結局決定的なスペクタクルで終わらなかったことに対して帳尻合わせに過ぎないからこそ、拮抗した試合による、選手の思い入れの差といった観客側の感情移入の違いによって判定が揺れたときに議論は巻き起こってしまう。そこで、先に書いたみたいな「判定基準をしっかりしろ」みたいな話が巻き起こる。

 しかしプロ格闘技が判定基準を明確にした場合、スペクタクルという目的が薄れていってしまう。 結局有効打をとるか手数をとるか、そのほかリングジェネラルシップかと拮抗している場合わからなくなることは起こる。ダウンを取ると自動的に判定で完全勝利だろって見えるかもしれないけど、要所要所でポイントを取り返されてしまうこのあたりはプロ格闘技の判定についてのクラシックといっていい「ジャッジを考えると競技がみえる」を参照されるといいと思う。

 そんなこんなを思いながら、あえて全然もりあがんないファイトスタイルのボクサーばっかり紹介していた「あなたの好奇心を刺激する、「ナシォ塩」の管理人のせ(@setyan001)さんのツイキャスを聴いていたら面白い指摘をされていた。結局どうあがいてもどこか曖昧になってしまう興行格闘技において、たとえばムエタイの判定において、チャイスー(闘う心)の強さの話を出していたのがなるほどと思った(間違ってたらすいません)。エンダムの方が後半にそれがあった、みたいな。チャイスーが見えるかどうかなんて本当に曖昧で数値化されない話なんだけど、今回の世界戦で勝敗以上の何かを見通すとすると意外に、単純にそこかもだったりしてな、なんて感じたのだった。

 こう考えて試合内容を思い返すと、もう自分の勝利パターンから変えないようにしているかに見えた。いい意味で書いている。こういう試合になった場合って足りていない部分をさしてそこを足すように言う意見(「五味!柔術やろう」とかね)がありがちだし、自分もかつては単純にそうしたらいいんじゃないのなんて思いがちだった。でも正直な話、自分の勝利パターンというのはどんなにスペクタクルなものではないにしても変えるべきではないな、と今では思っているし、いうなれば完成した勝利パターンを完遂できるように調整すべきでは。完成されたスタイルを持って勝つこと自体が実のところ限られた選手にしか持ちえないからだ。

 では完成されたスタイルをもっているはずの村田の今回の敗戦はどうみたものか。ちらほらとも見える、中盤でダウンをとり、確実にポイントリードしたゆえの少々置きに行くムードがあった、とかは敗戦したせいで言えるかもしれない。ことは、世界戦の大一番という、国内のプロとしてより飛躍するはずの村田陣営はどうなのかにあるとも思う。廃墟とは、現代では廃墟ではない顔をしているものなのです。




テーマ : 格闘技    ジャンル : スポーツ

ニコラス・ウォータースによるドネア・ステップの潰し方

Category: P・M・BOXING   Tags: ボクシング  
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ノニト・ドネア対ニコラス・ウォータース

 ゲンナギー・ゴロフキンのマルコ・アントニオ・ルビオとの統一戦と同興行で開催された、ドネアvsウォータースの対戦。

 リゴンドー戦以降のドネアはここ最近の試合内容などに少々の不安さを識者に見られた中でのウォーターズの防衛戦、試合開始冒頭の構図こそタイトスタンスでやや直線的な戦型・圧力をかけていくタイプで、ドネアのステップを基調としたスタイルで相手のタイミングを合わせていくそれは有効なように見えた。ところが……

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GSPのようなMMAファイターがボクシングに来たならば?の仮設、カール・フランプトン

Category: P・M・BOXING   Tags: ボクシング  
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IBFスーパーバンタム級タイトルマッチ
キコ・マルチネスvsカール・フランプトン

 えー、ボクシングファン的には9月にとっくに終わってる試合ですが、WOWOW外野席組的にはひと月遅れでこの試合です…

 長谷川穂積のキャリアの決定打となる試合を制したマルチネスの防衛戦の相手として、イギリスにて全勝というキャリアを誇るカール・フランプトンが立ちはだかったという試合。王者防衛線にもかかわらず、挑戦者のホーム。その理由の一つには過去にマルチネスはフランプトンに敗戦していたにもかかわらず先に王者となったため、その再戦ゆえとのことらしい。

 しかしオレが驚くのはカール・フロッチvsジョージ・グローブスの時にも思ったのだが、イギリスーアイルランドあたりのボクシングの観客動員数。興行的には難しめではある軽量級であるにもかかわらず、はた目からモニター越しに映る大会場に詰まった観客の数に驚かされたんだが、ここ数年(いやもっと長いスパン?)で何かあったんだろうか?このあたりよくわかってない。

 だがそれ以上に感銘を受けたのは、フランプトンの立ち回りだった。

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メイウェザーVSマイダナをリマッチしなきゃいけない不幸

Category: P・M・BOXING   Tags: ボクシング  
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 パッキャオvsメイウェザーという最高級のPPVマッチアップの実現が遠のいているうちにパッキャオは敗退を喫してしまい、予測されていた価値を幾分落とした。とはいえまだまだ望まれているし、パッキャオの偉大な閃きもまだまだ継続してると思う。
 

 その間のメイウェザーは余りある制圧技術や煽りによって相手を完全に封殺するし、その技術を飛び越えた先にくそ真面目なボクシングってジャンル自体をある種嘲笑するかのようにトップに君臨し続ける。オレがメイウェザーに感じるのは試合が制圧的でつまらない、というレベルを超えて、そもそものボクシングってジャンル自体をなんか俯瞰し、皮肉に見つめているかに見えることだ。もうボクシングってジャンルを変える気もないし何の期待もしてない強さ(なので見立てレベルでは極めてボクシングジャンル内の正統な勝ちを追い続けてるパッキャオとの一戦が陰陽みたいな形で望まれるんだと見るが)。

 もうウェルターでメイウェザーの皮肉な俯瞰のスタンス(技術的にも立ち位置も)を崩せる相手が消えてきて、この前のマイダナ戦は制空権を取る闘いをやらず、近距離に踏み込んで打ち込むバクチを続けるみたいな空気の読まなさだけしかなかったと思うが、それが「まだ近年のメイウェザーに通じてるように見える」ってことでリマッチが興行になってるってのは相当な不幸としか見えない。

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葛西祝

Author:葛西祝
ジャンル複合ライティング業者

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ビデオゲームというフィルターから俯瞰する、現代エンターテインメント総合批評
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