オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


文部科学省が認めたヴァーリトゥード・日本の総合格闘技史の潮流の一つ「空道」

Category: もうひとつの格闘技史   Tags: 空道  西良典  市原海樹    ロシア  
 日本の総合格闘技史、というのは、プロ興行的には猪木異種格闘・UWFの連続性によってプロレス的な見立てや幻想をフックとしたものってのが(未だ)一般的になっている感はあるが、実質始原というものを規定し辛いこのジャンルの歴史の中で、要所要所にてこの武道出身の選手が重要人物として現れ、あるいは総合格闘技史にまた一つの流れに分かれもする―というわけで今回はもうひとつの格闘技史「大道塾 空道の章。



大道塾空道
―大道塾 空道(だいどうじゅく くうどう)は、大道塾が作り上げた安全性と実戦性の両立を目指した競技であり、打撃技・投げ技・寝技が認められた着衣総合格闘技である。
大道塾とは、極真会館第9回全日本空手道選手権王者となった東孝により1981年2月17日に仙台市で創始された、「格闘空手」を標榜し創設された団体(現在は「空道」)。日本国内に100箇所以上、世界中で50か国以上の国に支部を構え空道の普及にあたっている。競技人口はロシアが最も多い。

組織としての大道塾と競技としての空道の関係は、講道館と柔道の関係に似ている―



 今この時点で上のダイジェストのような、今回のモチーフである大道塾・空道の映像を見ていると、これは現在のUFCがそのプロ興行としての形態だとか世界最大の場とかいうのを抜きにして、俗にボクリングなんて言われもする、アメリカでのボクシングとレスリングという立ち技と組み技の両巨頭の技術がブラジリアン柔術の構造の上にて混ざりあうという凄まじいもの(※)になっているとも言えるのだが、日本の伝統的な立ち技と組み技である空手と柔道がより実践的なルールの場にて混ざり合ったものということで現在のUFC(というか、アメリカMMAの潮流)が和訳された姿のように映ったのだった。

 これはアメリカに置いてのボクシングとレスリングの混合する場というのがポスト・ボクシング的なプロ興行たるUFCを頂点とするMMAというのと、金を取り世間に仕掛けるエンターテインメントのコンテンツとほぼ対立する、より実践的な意識に寄った、日本の伝統的な空手と柔道の要素を持った総合格闘技という「武道」である空道というのは、(詰めて考えた場合正確な相克ではないにせよ)このジャンルにおける興行か武道か。スポーツか実戦的な意識の修練なのか。などなどの相克をこのアメリカと日本の伝統的な立ち技・組み技の格闘技の混合から見出せそうな気もする。

(※脱線 今やカレッジレスリングのトップが「プロ」として稼げる場に転向する際に、かつては本当にプロレスラーになるかどうか。くらいだったなかで、現在のUFCの活況の中でMMAへの転向者が増える中で、「スーパースター」という呼称になったという近年のWWEなどはどう変わっていったんだろうか?レスナーなんかは現在のUFCだったなら最初からMMAに行ってたかもわからないし)






 空道というのは冒頭のリンクのWIKIをざっと眺めるだけでも格闘技史においてとてつもなく重要なところに関係しいているのが分かると思うが、華やかで時代の奔流に乗っていく意味の強い(そして最終的にバブルに至る)プロレス・UWF、そしてK-1サイドの歴史と比べると、ムエタイとの対戦や初期UFCへの出場などもう少し地盤の部分に接触してた意味が強く地味ではあったが、空道が誕生した80年代初頭から90年代初頭にかけて、いかに総合格闘技が成立するに至って様々なものと格闘していたのか?がよく見えて興味深く、90年代初頭ごろの谷川貞治氏が編集長だったあたりの格闘技通信とかUWFやK-1や空道や修斗やグレイシーらがシノギを削って新しいジャンルを開拓していこうとするごった煮の状況なんかこうやってそりゃあもう面白かったろうなあなどと思うのであった。

 そうした総合格闘技黎明期の中でも、MMA開祖の一つとも言えるグレイシー一族との接触などはホイスと闘った市原海樹氏と、ヒクソンと闘い、その後に日本MMAの代表的選手を輩出する和術慧舟會を創設した西良典氏などは空道にて高い成果を上げ、この初期の時期の中でも後に影響を与えた意味が強かったように思うし、この二人の経験が後に空道からMMAに本当に適応しようとした形態を模索していくという流れが生まれたようで、和術慧舟會の核には西良典氏の所属していた空道の経験が占めている、という風に歴史を遡ると、宇野、岡見はじめ慧舟會出身の選手たちがいかにして形成されたか?の理由も良い意味でも悪い意味でも分かる気がする。

 このあたりの時期の空道を再評価もしくは特集などを元紙プロ勢やゴン格などがやらないかしらんなんてことも思いもするけど、そういや2000年代の格闘技通信の編集長だった朝岡秀樹氏というのも空道出身で、しかも北斗旗軽量級優勝という実績で「やる側」を意識したガチガチの紙面作りというスタンスだったらしく、2000年代前半らへんの何かのムックに寄稿した際の記事にはK-1のボブ・サップ投入に「競技を壊すのか」と苦言を呈しまくっているというから本物だ。こういうメディア部門にも空道の流れを組む人間が現れ、そして良くも悪くもな成果をあげているようなのだった。






↑空道の競技人口最多というロシアでの大会。競技のフォルムもあってかヒョードルなど想起。

しかし「武道」という形で、防具付きでグランドでの打撃は寸止めで形に入った時にポイントが入るものとはいえ、頭突きありでむしろ防具があるゆえなのか、一撃で失神するリスクが少ないゆえなのか試合によってはプロ興行格闘技以上にとてつもなく荒々しい内容になり、寝技も30秒以内に設定されておりグラウンドにもつれ込んだ時にもまずガンガン関節を極めにいくシーンが多々見られる。

 未だにプロ興行格闘技がフックとするバイオレンスか競技的なフォルムか云々で肘やグラウンドでの打撃などの打撃の禁止やグラウンドでの膠着ブレイクなどからアグレッシブかポイントを取るのかみたいな判定基準、またはラウンドの数などなどに関して語られてるとは思うが、そうした格闘技見なれた目で「武道」である総合格闘技のこの競技を見て感じられるのは、プロ興行のMMAがある時期には4点ポジションからサッカーボールキックまで許したえげつないバイオレンスにまで到達しているのに対し、武道という洗練や思想の範疇のなかでバイオレンス性が映り込むあたりで、総合格闘技は必然的にその歴史や数々の出自ゆえかよりバイオレンスなものでもあるということを改めて思い知らされる。

 ゴン格の「教えて!教授」の松原隆一郎氏(この方も空道の段位を持っている。どんだけなんだ空道)の発言だったと思うが「小見川道大のスタイルは空道でこそ爆発する可能性がある」というのがあったが、ここ日本の総合格闘技史の最重要な一つの流れでもあったわけだし、今のMMAファイター、あるいはシュートボクサーなどなどの空道への巡礼というのも見てみたいとも思う。
 すでに吉田道場の中村和宏選手が空道に出場していたりもするが、このケースに続いて極真出身のMMAファイター菊野克紀などの空道、場合によっちゃ即極めに行くスタイルの中村大介とかZSTの藤原敬典などなども合いそうとかなんとか思いつつ、割とこれも様々な出自の選手が参加出来そうなフォルムにも見える(雑な認識かもしんないが)


 日本の総合格闘技史として佐山聡なども追っている「武道」の部門においての成立を、今のところ文部科学省の後援を得るなど最も成功させたケースと言う意味で興味深く、冒頭のUFCなどの比較も込みでこのジャンルにおける「興行」か「武道」か。などなどの様々な決着のついていない相克に関して思いをはせられるのであった。
 
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