オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


金網への見立て UFC日本の1秒間と、PRIDE崩壊後の5年間(後篇)

Category: 米国基地   Tags: UFC  MMA  本ブログの総括編    
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<<UFC JAPAN 見立ての格闘観戦記録とブログ回顧・後篇>>





 さて大会前の記事にもちょろっと書いたけれど「ほとんど戦極」という側面も込みで、今大会が奇跡的に優れていると思うのは良く見るとこの大会の中に現行の日本格闘技界とUFCの構図に加え、PRIDE崩壊後の過去5年間での日本格闘技のファクターがコントラストとなっている点だ。

 本当にこのUFC日本大会で散りばめられる格闘技バブル崩壊後の残像と、それを打ち消していくという興行の流れは全て偶然なんだけど見事であって、例えば計量オーバーしたランペイジがPRIDEのテーマで入場。それを明らかに動作の処理速度が上回るライアン・ベイダーが全局面上回り(あんなデカイのが高速で動いてるのはすごいよ)、ランペイジの見せ場はバスターのみ、という内容は戯画的ですらあって、PRIDEも末期はむちゃくちゃで、主催側のよくわからない自意識とかいろいろあったことなどが思いだされる。 

<<日沖vsパラジェンスキーの1秒間>>

 UFCデビュー戦こそキャリアの中で経験の少なかっただろう自分よりもリーチのある選手に苦戦した日沖だけど、やはりこの階級の中では長いリーチを持っているわけで、それを武器とした展開こそ日沖の真骨頂と見え、1Rからジャブやキックを生かし、そこからのスムースな混合に寄るタックル、金網でのさば折りの投げ、そこから長い手足を生かした抑え込み、パス、マウント、バックでの制圧の流れと盤石の展開。

 現在のトップの日本人選手が高いレベルの選手と渡りあっていくにおいてアドバンテージとしている点ではある。いつかのチーム黒船の山田氏がMMAでトップクラスで渡り合える選手として岡見と青木のような、長身で距離を作れる体格が有効なんだ、ということをインタビューで語っていた記憶がある。おそらく今現在の青木がUFC(現実的な話をするならベラトール、ONEFC)に上がった際も大体こうしたタクティクスでいくのではないかとも見えた。ミドルやローで距離を作り、金網に追い詰めて組む。接近してきたら首相撲での崩し⇒テイクダウンで上を取る、みたいな感じで体格を生かした戦術になるのではないかなというか。

 現在のMMAを見る限り、そうした長身によるアドバンテージを持たない日本人選手で、UFC軽量級の中~上位の選手がやっているようなフットワークの鋭さとそれを持続させるスタミナのある選手というのはあんまり見ない。勝手な想像なんだけど、高阪剛さんが「エドガーには日本人が闘うためのヒントがある」と発言してたけど、あれって体格のアドバンテージのない選手がほとんどであるわけで、体格差を埋めるエドガーの持ってるスタイルと言うのを学べということなのだろうか?

 
<<ハントとコンゴの1秒間>>

 あの腹周り!ハント絶対練習してないだろ!ほらコケた!・・・あ、あれ?追撃に来たコンゴの両脇指してポジション入れ替えて金網に押し付けてる?く、く、組み勝ってる?

 ばばばバックステップの左でフラッシュダウンさせてる!?あんなのごり押しパンチ時代の打撃じゃないやんけ! 完全になめた目線て見ていたオレだが、どうも闘ってるコンゴが一番なめていたんじゃないかとさえ見え、ダウンから立ちあがった後みるみるうちに動きが「ちょちょっと待て、こいつはヤバい」というかのように棒立ちのようになり止まり始め、金網に追い詰められたところにワンツー!ハ、ハント練習してはったのか・・・・

 意外な男のMMA処理速度が向上していたのだった。



 
<<アリアニーセレステと西垣梓の1秒間>>

 スゲエ競り合ってる!さらに戦極再評価の機運が高まって来た!!!




<<秋山とシールズの1秒間>>

 この試合はすごい地味な部分だけど、MMAでの組み技の闘いというシーンの重要性が出たものと思う。ただ、そこが軸になりすぎるおかげで両者共に実力の欠けている部分が露わになってしまったようにも見えた。意外に二人とも足が使えて無かったり、打撃から組み技の混合がスムースにいってないシーンも見え、試合全体の処理速度は遅く、平たく言えばショッパめの試合だった。

 1Rで秋山がシールズの片足タックルを受け切ろうと金網まで追い詰められ、そこでシールズが片足から両足にクラッチを切り替えようとした瞬間に合わせて秋山が脇を指し、ポジションを入れ替えてシールズを金網に押し付けたような展開を作った時点で秋山がアドバンテージを取っていったように見えたが、やはり組み技を警戒して、踏みこんでいって重心を崩してしまわないように打撃を打たなきゃいけないので決定打を打てない。非常に美しい払い腰のカウンターを出してテイクダウンもするのだが、今度はシールズの寝技を過剰なほどに警戒してすぐに離れてしまうのも、ラウンドを取り切れなかった要因にあると思う。

 シールズも意外にエレンバーガーに秒殺されたり、カンプマンなどに苦戦したのも偶然じゃないのかも知れない。これもまたメインのエドガーのタックルの入り方と比較してハッキリすると思うんだけど、打撃の動作と繋げていない単発のタックルは初動から見切られてしまうのではないか?、と見え、ここでシールズの方も秋山の打撃にものすごく警戒していて打撃が出せず、かなり単発のタックルになったのかもしれない。とはいえ、スタンドと組み技のミックスが綺麗に繋がっていないと今はテイクダウンを取るのも難しいと思われ、打撃も組み技も良いんだけど、やっぱこのあたりのミックスの弱さがシールズの穴なのではないか。

 
 
<<エドガーとベン・ヘンダーソンの1秒間>>

 これが日本にて実現した最大の効果は、完全にMMAを見る視点を調律し直したことだと思う。観戦した人から「どの試合がベストバウトだったか」のアンケートを取ったとして、おそらくこの試合が首位を取ることだろう。

 今更ながらやはり驚異的なのはエドガーのあの体格で、あのリーチで、明らかに上回るメイナードや今回のベン・ヘンダーソンとフルラウンド渡りあったことであって、それが可能なのはその体格差、リーチ差を埋めるように進化しただろうあのフットワーク、ステップワークをベースに、ボクシングとレスリングの技術を完全に混合させた試合展開をフルラウンドで展開していることだ。驚異的ゆえにそのリーチ差が良く見える全く当たらない遠い距離でのバックブローのシーンについ萌えるくらいだ。

 今大会中最速の攻防の処理速度と動作の密度で展開され、二人とも高速で動きながら、攻撃を仕掛けながら距離を探り合う。体格で勝るベンヘンが向かってくるエドガーを迎撃していくような試合展開と見え、体力のロスも少なそうで、もうGSPに続いて現代MMAの水準を引き上げる内容を見せるエドガーであったが、それでも同程度の競技水準になり、体格差・リーチ差を武器にされ対策立てられ出してしまうとかなり攻めあぐねてしまうように見えた(いや、もうこれまででライト級で勝ち残ってることは凄いが)。

 こうして試合展開、競技能力の側面でさえもこのメインはここまでの試合の欠陥を完全に補完する内容になっており、まさにUFCが日本にて展開されることの意義を完遂したと思う。

 ほとんど華の無いと見えた選手がBJペンに勝ったときには良くは思っていなかったのに、再戦に勝ち、メイナードとの3度の死闘を経て気が付いたらかなり好きな選手になっていたエドガーであったが、「ダメージを受けたからがエドガーの真骨頂」などと言われるけど身体にものすごく付加がかかってしまう試合を重ねているに違いなく、なんかアントニオ猪木の言葉みたいだけど「こんなMMAを続けていては5年持つ身体が1年で持たなくなる」みたいに見え、今後KIDのように打たれ弱くなってしまったりしてしまうような気もしている。もう当たり前みたいに見てるけれど、エドガーの活躍と言うのは途方も無く貴重なことでもあると思う。



 正直言ってUFCジャパンのカードというのは弱く、黄昏の日本人選手らがここで一気にリリースされるような気配で、しかも結果的にそうなってもおかしくない勝敗がKIDや岡見から出たし、ランペイジも完敗したし、見なかった人がスポーツナビなどで勝敗だけ確認するならそこに華やかな部分を見出すことも難しいとは思う。

 しかし、本大会を通してみた結果、明らかに何かが通りが良くなった。非常に気分が良かった。それはなんというか「やれんのか!」から旧PRIDE勢とFEGとの連立を最後に、何年も存在意義が見えない長い期間を送った日本格闘技に、現代の格闘技の質というものの再インストールが完了したような結果からだ。少なくともオレがこの興行で心地よかった点は単にアメリカのショーが直輸入されてきた喜びではなく、格闘技の質的な変化ということをリアルタイムで体験できたことが大きい。

 それはここまでにも書いたように過去5年間の日本の格闘技と、現在進行形での格闘技界の構図が、選手の欠場等の偶然によりコントラストとなり、そこにはPRIDE崩壊(プライドテーマで入場したランペイジの敗戦)からDREAM、戦極への分裂(KID、秋山、五味vs光岡、西垣梓)、K-1、FEGの崩壊(ハントの活躍)、そして再インストール的な修斗、リングスなどの動き(代役での修斗ランカー田村一聖から、起用の噂レベルだったアウサイ吉永啓之助の名が上がるなど)までの格闘技バブル崩壊後の5年間の要素が回想されるような形となり、メインにてその時代から完全に質的変換を遂げているエドガーvsベンヘンにて現在に辿りつく、と言う形で、見事なまでにPRIDE崩壊後から現在最前線のUFCまでの5年間でのMMAの質的変換の流れをそのまま興行の中で観客が体感できるという稀有なものになったと思う。
 


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