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青木真也のムエタイはどこへ?現代MMAの射程距離

Category: 「見立て」の格闘観戦記録   Tags: MMA  青木真也  
花と網
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 ジャパニーズMMAは遅れてることを証明しただの、日本格闘技ガラパゴス(昔から思ってるがこれは本当に嫌な言葉だ。この言葉で日本の現状を語る人間をオレはほぼ信用していない。批評はこうしたスラングがいかに生成されるのかまで遡らないと意味はなく、それをしない、言葉に疑問を持たない人間の言葉に何の力もないからだ。)だの、リアルな闘いの周りにやけに抽象的な言葉がいまだに目につき、少なくともオレがなるべく技術視点で見ることの利点は、そうした雑音にまみれた実体はどうなのかをある程度判断できることだ。

 実は2008年の大みそかに行われたこの試合の第一戦は、オレの格闘技オールタイム・ベストに入る一戦で、旧DSEとFEGが連合したあの時点だと何かが変わるんじゃないか、という時代のうねりが体現された大会だと思うし、あまり好きではないとはいえ、青木がもっともそんな時代のうねりに乗っていた、当時の技術とタレント性が一致していた格闘家のキャリア中に一度あるかないかの時期を迎えていたころだったと思う。印象深かったのはその点からだ。

 それから4年、2度目の開始早々の崩れたハイキックに少々動揺する。妙に前傾姿勢を取っており、なんとパンチでリードを作っていくという、現代北米ジム出身系統のMMA的スタイルで向かっているように映る。がしかし、これまでの青木がほぼやって来なかったと思うスタイルには違いなく、合っているとかいないとかそうではなく新戦術を自らの資質にアジャストし切れているかどうかを見るに、この大一番でこれで行ったかあとも感じた。

 そしてそれがアジャストし切れていないのでは、とより感じたのは、これは1戦目と同じシーンがあったが完全にアルバレスがバックステップの動きになって決まっている時に放たれたタックルであり、一戦目と同様に完全にかわされそれから猪木・アリ状態になってしまった。現在のMMAで上位の選手はエドガー、クルーズなどなどカレッジレスリングのベースの上にボクシング技術がミックスされることで、そこからの打撃の仕掛けの繋ぎからタックルを繰り出すことでMMAでの組み技の争いが生まれていると映っている中でのこれは、かなり厳しいレベルのタックルの入りかたと切られ方だと見えた。


 青木が実践しようとしているだろう現代MMA的な動きとの差をアルバレスが見せてしまっていたように思えた。フットワークを駆使した動きから、高速でステップイン・アウトしながらボディストレートを打ちこんでいく。そこから青木がどんどんアルバレスに距離を作られていってしまったように見えた。青木は「ムエタイは距離の格闘技」とどこかで答えており、そうした制空権の取り合いこそ望むところだろうにあまりにも皮肉な光景だった。

 そうなのだ、もうMMAでの射程距離というのはエドガーを例に挙げるまでもなく、クルーズやデメトリウスなどからTUF軽量級上位の選手にまで至るまで、既に八角形~円形で広いケージと言う場を生かした、巧みなステップ・ワークとフットワークというものが前提であって、それはウェルター以下の階級で上位でそれが無い選手というのはまれなケースというくらいになっているのだ。

 だからこの前のUFCフライ級デメトリウスvsマッコールを見て改めてビックリするのはそのスタイルが当然であるかのようにアタックを仕掛け、打撃を打つにしてもテイクダウンに繋げるにしても長い距離をステップして打つ・避ける動作で、しかもそれをお互いが常にフットワークを駆使して動き回りながら試合展開となっており、これは一例にすぎないけれど現代の北米・金網でのMMAでの制空権の取り合いとはそれほど広い行動半径を持つことによってようやく獲得できるものではないか?と今のところは思う。

 ほとんどの選手がアウトボクシングしているとも言えそうだがそうではなく、多彩な攻防が有効なMMAにおいては最適化されていった結果それがあたりまえの基本技術になったと見え、とりあえず技術面に明るい他のブロガー様やゴン格などの意見をまとめるに加速度的に発達し、そして日本人選手の環境では向上し辛いだろう、現代MMA前提の技術こそがそれではないか。


 この試合がたとえDREAMのリングだったとしても結果はやはり同じだったと思え、オレにはそれほどアルバレスのステップワークから繰り出されるボディストレートでの出入りによる、MMAの距離の作りが見事に決まっていたように思えた。リーチに勝っていた青木はどうしたらよかったのか?近い体系の長身痩躯の岡見勇信やキックの佐藤嘉洋などは前進してくる相手にはテンカオで迎撃して距離を取り直し、圧力をかけていくなどの戦術を良く取るが、ムエタイに傾倒していた青木ならそれで対応するのかなとも思っていた。オレは去年の格下の試合とはいえ、ムエタイ技術のミックスで首相撲からの膝や崩しからテイクダウンという攻防がなるほどと思っていたんだけど、あれもリングで、リーチに劣った相手で、密着した距離に持っていきやすいから可能であったとも言え、思えば青木の必勝パターンというのもそういう構図が多かった。メレンデス戦も、今回も、完全にそれをさせないようにする射程距離を作る技術がもう発展し切ってしまっていた。次第にアルバレスに詰められ、青木は金網を背にするようになった。

 でもオレが哀しかったのは、1戦目もリングのコーナーに追い詰められるも、アルバレスの放ったミドルをキャッチして引きずり込んだことからヒールホールドに繋げていたのに、今回金網に追い詰められた青木は、それこそムエタイ選手こそが理解しているだろう密着した距離の際でなければ、金網に追い詰めている側でなければ当たりにくいだろうエルボーを出してしまったことで、アルバレスの射程距離のまえにそこまで手詰まりにさせられたように見えたことだった。青木がパウンドを受け続けるのを見ながら、80年代の日本のボクシングの世界戦15連敗と、そこからが長いという話をオレは思い出していた。



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