オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


マカオのカン・リーの劇的勝利と、「アジアでのMMA」開拓のフックに関して

Category: 「見立て」の格闘観戦記録   Tags: MMA  UFC  カン・リー    
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 現行ではもっともスポーツ的で、理学的に詰めつつあるかに見えるUFCとて、ガチガチの強度の張り合いと別のポジションに映る選手がいる。かつてはキンボ・スライス、ロイ・ネルソン、そして今回のカン・リーあたりは、あくまでも印象なのだけどそういうポジションに見える。日本で言うミノワマンのような。

 とはいえやっぱり実績の上がっていない選手がここまでUFCと契約できているわけもなく、キンボはともかくロイ・ネルソンなどはミルコよりも遥かにMMAが上手い選手で完勝しているわけなので、強度と別のところにあるように見えながら、要所要所で勝っているおかげで結果不思議なポジションに見える。

 しかし、そんな不思議なポジションでも条件がはまると奇跡的なものになって爆発することがある。そこに位置するかと思われたカン・リーだったと思うが、まさに今回中国マカオでのリッチ・フランクリン戦の結果と言うのは、翻ってざーっと興行格闘技史的にはめったに当たらないところにダーツの矢が当たった、という感じだった。

<<リッチ・フランクリンVSカン・リー 見立ての格闘観戦記録>>

 さて中国に向けてのUFCがマカオで現地Tシャツも「総合格闘技の父はブルース・リー」とかってムードで、アクションスター兼業で「パンチより蹴り技が多い」でカンフーをフックとしているカン・リーがメイン張ってガチガチの現代MMA北米系フランクリンと対峙する構図というのはベッタベタな現地興行ではある。

 とはいえそんな「アジアを向けたフック」もいい加減だ。マカオ一発目だからなのか水垣など日本人選手はじめキム・ドンヒョンはともかく、UFCに契約している東洋系選手を右から選んでいるようにすら思うし、どの選手か忘れたけど入場にPSYの「江南スタイル」を使っているのもいた。韓国と区別がついていない。まさにいい加減!

 しかし実際目の当たりにしていて思いだしたのは「末期FEGがPUJIキャピタルと協力した」というニュースで、実際のFEGのあれは借金で首が回らなくなっている中で「まだ大丈夫です」と言うためのギリギリのアピールでしかなったもののようだが、そこから導き出される「日本のメジャーMMAの未来とは?」みたいなことをリンク先見てもらってれば分かると思うが本当に大真面目に考えていて、時を超えて今回のマカオ大会ってのは実のところ当時のオレがうっすらと思い描いていた光景にかなり近いものがあった。谷川氏はなんだったのだろう、とか入場でトラックスーツ風ジャケなどとブルースリーネタを隙間なく埋めてくるのを観ながら考えたりしていたよ。

 とはいえメジャー団体主力級の日本人選手の出場や青木真也が契約しちゃった「ONE FC」の台頭など、FEGとPUJIキャピタルのニュースから2年後の現在FEG倒産でDREAMも活動停止に陥って格闘技雑誌が端から腐って行ってほぼ読む意味が無くなってきている(KAMINOGEとか前田日明と青木真也の対談なんて売り物にするんだぜ?この二人に共通するのは業界のドメスティックなところにプレッシャー掛ける意味が強いことで、その二人の対談。こんなもん面白がるセンスは完全に終わってるよ。)中で、アジア方面のMMAというのは実際にはそんな「起源はブルースリー」とか言っちゃったりする文脈を踏まえず興行にしているのが現状ではある。実に興行パッケージとして面白味のないそれではあるが、アジアで現在経済的に潤っている場所であるシンガポールの余暇という程度の話なのでそんなものかもしれない。





 それにしても興行格闘技上、ないし映画などで意識的にカンフーなりの「東洋性」などが近代の興行上のフックとしておおっぴらにされるのは、いきなり現地からドーンと来るなんてことはなく、実際のところ幾重にも入りくんだルートや構図を辿ってきているというのが多い気もする。ほらUFCから爆発的に広まった東洋の格闘技術・柔術にしても、かつて日本人から倣ったブラジル人がアメリカでなんて流れでようやくきたわけなんだから。

 それこそMMAのインスピレーション先の一つであり、永遠の東洋の英雄であるブルース・リーがいかにして今日のような歴史的に広まる意味を持つに至ったかの構図を紐解いて見ても、その出生からアメリカ映画界・長らく英国領であった香港の映画などなどを行き来する経歴を経てのことであり、実際のところ産地配送のような中国拳法を持ち込んだというよりかは世界最大手であるアメリカ映画興行との距離のすり合わせによってようやく西欧近代の興行(固いこと言ってるがアメリカのでかい興行)に東洋性を乗せることになるのである。

 その意味で「マカオでのカン・リー」というのは実際には入り組んで入り組んでやっと乗せられた、欧州米国的な近代興行の中に通過された(半ばステレオタイプな)東洋性という意味で、元ネタであるブルース・リーと似通った、伝統的と言っていい構図になっていると思う。カン・リーのその経歴はベトナム戦争末期に生まれ、そしてアメリカに渡ったという出生があるベトナム系アメリカ人とのことであり、しかも実はレスリングの猛者で高校オール・アメリカンという実績を持っている。では特色である立ち技はいつ習ったんだというのは22歳から散打、ということなのである。

 実際にはほとんどと言っていいくらい東洋性とは遠いような経歴であるのだが、それが旧ポルトガル領でカジノで有名なマカオという中国ギリギリの場で興行という場で現代MMA中堅のフランクリンと闘うという構図また絶妙ではある。そのように欧州米国に入り組んで通過した東洋の人間と場で実現されたカン・リーの勝利というのは、それは日本における「90年代にプロレスラーが近代総合格闘家を撃破してしまう」という感動にとても近い質を持っている。

 そんなふうに見立てのレベルでキッチュな感じとガチガチの強度の張り合いのバランスがとても感慨深い試合だったのだが、単純にカン・リーが決して実力よりキャラ優先で今回のKOもフロックなわけがなく、俳優業から復帰直後のストライクフォースでのスコット・スミス戦での敗戦以降かなりのところ現代MMAのルールを習得したうえで闘っており、敗北したとはいえヴァンダレイとも打撃で渡り合い、パトリック・コーテに判定勝利しており、ほぼ蹴りを封印して距離を探り、フランクリンのローキックに合わせての右という結末は、お互いが逆だった場合を予想していた人も多いだろう。(これ五味がタイソンや石田に見舞った展開だよな。五味はツイッターで「情熱の無い選手と試合するのは相手は嫌なもの」という評価に同意だ)

 実際にはそれほど東洋的でもなく、マカオもカン・リーもバッタ物ギリギリだ。試合内容も極めて現代的なそれである。が、歪にいりくんだ「東洋性」のフックが奇妙に印象深いものにしている。問題は欧州米国にとっての東洋とはなんなのかな、ということかもしれない。秋山成勲がどうせなら見たかった。あれこそ日本と韓国で歪に入り組んだ柔道屋でこういうマカオみたいな場でこそ輝くのかも分からないから。

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テーマ : 格闘技    ジャンル : スポーツ

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