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ブシロード新日本が救う桜庭の「意味」 中邑真輔vs桜庭和志

Category: 「見立て」の格闘観戦記録   Tags: ブシロード新日本  桜庭和志  中邑真輔  WWE  Iphoneでブログ書くもんじゃないな  
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2012年のベスト書き終わる前にイッテンヨン来ちゃったので先に「中邑vs桜庭」の話題をさらっと(のつもりだったが、書いてるうちにおそろしく長くなって1・4からかなり経った今になってしまった)。

 まず先にいうと去年一年の格闘技は「間違ってる面白さ」と「正しいつまらなさ」 のどっちかしかなかったみたいな感覚なんだけど、そういう気分からしたらこの試合はおおよそその真ん中当たりの評価。正しいし、間違っており、つまらなく面白い。という二律背反の感想が試合中に振り子のように行き来する内容だった。


しかし心に残るのは「今の桜庭の評価は」ということであって、プロレスと格闘技がごっちゃになってる文脈の中で時代を制した最大のスターの後期のポジションとは?そして今の新日本の文脈とは?に関してのエントリ。

<<中邑真輔vs桜庭和志 見立ての観戦記録>>

<<・・・に行く前に今の新日本が語られるべき文脈とは?>>

 ブシロード体制になってからの新日本は構造的に「ジャパニーズWWE」というのにふさわしいと思っており、これは現代におけるプロレスの体制としては正しいことだと思う。厳然としたプロレスラーのキャラクター化。シナリオラインの決め方、あからさまに整合的な試合内容などなどによる、パッケージの徹底。ここ10年間のプロレス暗黒時代の裏テーマ「WWE化」というのも何とか制しつつある感がある。

 なので、もう昭和からのプロレス格闘技時代の文脈とはほとんど別物であり、OMASUKI FIGHT様や 挑戦者ストロング様など昭和くらいからのファンのブログなどを見ると「オカダや棚橋の良さが分からないし誰か言葉にしてくれ」みたいな評価を見るが、本気で読み解くなら現在の文脈からしてWWEとの比較必須でちょうど新日本からWWE行ったヨシ・タツもいるわけだし、そこからの比較によってからしか棚橋オカダのブシロード新日本はまともに語れない気がする。

 なぜならアドリブではなくプロットを重視したプロレスは経済的に最適化されたものであり、ブシロード改革によるWWE化の最大のポイントはそこと思われ、WWE化とは何もデタラメなキャラクターや寸劇を演じろということではなく経済発展的な方向に体制を整え直し最終的な目的地を据えさせたことだと思う。


 オカダ・カズチカの空虚でありながら当然のようにスター然としているのが象徴的ではあるが、プロレス格闘技ストロングスタイル殺しがどうのととんでもなくハイコンテクスト化してた日本プロレスを新参でもわかりやすく「こいつがエースか」と分かるローコンテクストに切り替えたことは、いつまでも年を取ったが名のあるレスラーが(どうしても)前を張らざるを得ないのを多く見る中で、極めて健全なことで大変に評価できる。


 オレは現在のプロレス評価のボリュームゾーンってそこしかないと思うんだが実際には週プロからKaminogeなどマスコミから、最大手プロレスブログ・カクトウログさんなどを見ても、基本旧来からのプロレス格闘技混じりの文脈でそういうアプローチしてるのって時々しか見ず、あまり大手を振っての比較や分析は見ない。いっそのこと経済のアナリストのような手付きで新日本とWWEの構造や手腕を評するみたいなものの方が批評的に当たってるのかも分からない(そしてそれが感情的にはまったく面白くないものであるのもわかりきっていることだ。)


 だからと言って昔「シュート活字宣言!」みたいの書いてた奴みたいなWWE文脈の語り方、あれはダメだ。プロレスのジャンルが揺れまくった90〜2000年頃なら意味があった時期なのかもしれないが、あんなプロレスの内幕云々のドメスティック掘り下げ位が比較対象って語り方が実り無いのは結局のところハッスルはじめWWEエンタメプロレスの誤読なんかに近くてそういうことじゃねえだろとしか思わない。

 日本のエンタメプロレスつってその実情はプロレスの構造をいじくったパロディか暗黒時代新日本いじりまでが限界。オレもそれ紙プロ山口日昇さんやマッスル坂井さんの行うプロレス批評って意味ではで楽しんだりしたけどドメスティックはドメスティック。結局そのライターかなんかもリテラシーは低いが何かを語りたい奴か都落ちしたプロレスライターしかいないミルホンネット根城にしてジャーナリズムの正義やらうんぬんにして格闘技の内幕漁りに熱心なちっちゃい上杉隆と化してたしな!




<<本編・中邑vs桜庭>>

 両選手を色つきのライトで照らしだしたり選手の現在のポジションを暗に含めた言い回しを多用したりしながらジャンルを取り巻く背景を解説してるなど、完全に佐藤大輔的な煽りVのアプローチの仕方で両者が語られる。

 そこでMMAの経験のある中邑と、MMAからプロレスへと戻ってきた桜庭を通じてここ10年のプロレスと格闘技を巡る環境と現在が簡単にコントラストとして伝わるものとなっているが、オレはこれを新日本がやってるあたりのほうに琴線がかかる。

 新日本のWWE化仮説をもっと押し進めれば究極的にはあらゆる団体や選手を買収して拡大しエッセンスとしてしまう領域になるだろう。それはWWEが、マニアックなハードコアプロレス団体ECWが崩壊した中で買収し、後に一つの番組として蘇らせるように。

 桜庭と柴田の新日本参戦とは現実的には「昭和のプロレス的な強さとアドリブの不確定さを呼び戻す」ではなくブシロード体制になりベースでの強度が増した新日本の最初のエッセンスの回収という評価に落ち着く。だからジャン斎藤さんの書いた「ストロングスタイルという麻薬」という形には全くならなかったわけで、実際には二人とも全くと言っていいほどプロレスから逸脱していない。中邑vs桜庭も試合のイニシアチブの握り合いにはグラウンドでの動きがポイントと思って見ていたが、グラップリングの教本のスイープのお手本みたいなシーンを見るにその意思は二人ともないだろう。

 柴田を褒めあげる昭和ファンの言説などは正直今の筋書きをなぞるプロレスに馴染めない自分に都合のいい感情移入先を見つけたというだけの歪んだ過大評価を与えており、オレは柴田vsミノワマンを笑いながら見ていた須藤元気のような気持ちに近く、本当に柴田を見てるなら真壁戦開幕いきなり両足タックルしてるのを誰かもっと突っ込めよ!と思った。MMAでは全部スタンド勝負でテイクダウンとかアイスマンと闘った時以外まったくやってねーじゃねーか!全部倒されてマウント獲られてたじゃねーか!オレはプロレスラーがMMAなど外に出て闘った場合、プロレスに戻って来た時にはその時に生みだしたシーンを生かすべきだと思っており、柴田がMMAから持ち帰れたシーンもほとんど組み負けあっさりマウント獲られるというものばかりで勝手に真壁戦も「真壁に全部テイクダウンとられてロープブレイクを使ってしか脱出できないし組んでも負けるから打撃しか打てない」みたいなシーンになんのかなあと思ってたらMMAは無かったことになってるかのようなハードヒットのプロットプロレス。TVで観ながら暴動起こすかと思った。

 そういう意味でやっぱ猪木はすごかったんだなあとある種伝説の「タッキーvs猪木」なんて見てたら猪木が外から持ち帰った最大のモハメド・アリ戦でのあのアリキックを滝沢秀明に連発してるのを見て、ああやっぱ生かし方を熟知したほんまもんなんだなあと数々の名勝負でもなくそんなところで関心したのを思い出した。

 
 いまやすっかり経済的有用性に振り切ろうとしてる新日本の中での中邑は猪木に突如噛みついたのも今は昔でいつの間にやらボマイエの前に足ふみならすショーン・マイケルズの威光を(結局棚橋と共に)借りた不思議な選手に落ち着きつつある感があるが、何だかんだで数少ないMMAから持ち帰ったシーンはそれが本人にとってあまり良くないものだろうと持ちかえってきて生かしてる。アレクセイ・イグナショフ戦でのタックルから膝を受けるってもっと技術が細かくなったMMAでいまや全く見なくなったシーンで、桜庭が膝で迎撃というのは全く観たことないシーンで少々シュールに感じつつも、何だかんだでMMAの技術をプロレスに持ち込もうとしてる中邑でなくては桜庭というエッセンスを回収できなかっただろう。


 その中邑を触媒にした桜庭の意味の回収は見事だった。桜庭がMMAで手に入れた最大のシーン、グラウンド状態になってる相手へのフットスタンプや試合終了間際でのバックについた相手のクラッチから腕を獲り、アームロックへと持っていったヘンゾ戦などなどグレイシーとの闘いで生みだされたシーンの数々が再現される。


 もうここで数々の同じ感想が出てるが、そのことが何故か悪くなかった。桜庭はプロレスも格闘技も揺らいでる時代にてスターとなったせいもあるのかいつまでもその後の享受に難があり、結局UFCにおける今のチャック・リデルのような立ち位置に落ち着くのか(それは大晦日DREAMのオープニングの役割のような)わからないままで観る側の心の方がすり減る敗戦をいくつも見せられ、桜庭の生みだしてきた意味というのがいつも期待され、削られるのを近年見続けてきたと思う。

 スターの利点であり悲劇はすでに一選手の競技能力を越えて「意味」によって成立してしまってることが多く、格闘技の現実は遺憾なく意味を奪う敗戦を見せる。スター選手本人の主観では単なる敗北であるかもしれないが、観る側にとってはその意味がなによりも興行に金を運んだり観るに値する物語の一つであるので、それが無残に崩れ去るのは辛い。

 桜庭と中邑の試合が観ていて気持ちいいことの一つに、MMAではもう田村と闘うなどやガレシックと闘うなどの厳密な競技の相性や関係を見越したマッチメイクではないと「意味」をろくに回収しきれず、失敗して痛々しい現実しか見せなかったのに対してここでは見事なまでに「意味」を回収した試合内容を見せていることだろう。


 そしてそれが実現できたことに関して桜庭を褒めるのではなく、日本MMAが持て余したままのそれを回収したブシロード新日本の進歩のほうに意味がある。WWE化が順当に進んでいけばこんな形で今の業界が持て余したままの意味を回収していく路線になると思われ、次はもうおそろしい分裂が起きてるノア周辺を上手く回収して、一つのシリーズ名として再生したりするなどしてどんどん領土化していくみたいに、どんどん外に仕掛けていくみたいになっていくなら大マジに「プロレス次の黄金時代」みたいのは気付き上げられるのではないかと思う。

 新日本WWE化でさらなるプロット&パッケージ化みたいのは進むと思われ、極限まで行けば選手の試合ごとの視聴率やなどの売り上げによって選手がレイオフされたりするWWEが如くあらゆる側面が経済的に最適化されたプロレスへと変わるだろうと思う。格闘技や他団体の方向性までも買収するなどして「エッセンス」としてしまい飲み込みながら。もちろんものすごく順当に行った場合だけど、ブシロード新日本が今の方向を目指した場合の最終的な勝ちはそこになるだろう。
 
 なので桜庭の意味を上手く回収したこの試合は、回収できる中邑というタレントを持ったブシロード新日本の懐の深さと躍進を示すひとつなんだと見え、格闘技性を回収しながら「プロレスと格闘技は全く別物」と示した上手い代物だったと思う。なんか変な立ち位置に見えてた中邑を正す意味で桜庭&柴田の新日本参戦って中邑ばかり得をする状況になってるよなあ。柴田戦も多分組まれると思うがこれも絶対面白くなってしまうと思うし。
 
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テーマ : 格闘技    ジャンル : スポーツ

Comments

MMAから持ち帰る意味というのは私も以前から強く思っていました。
ですから柴田の試合が真壁の持ち味を出すだけの試合になってしまったことと、全くこれまでの歩みの意味がなかったこと。そして試合後の後悔コメント…全てを通してがっかりさせてしまった罪の重さは大きいな、と。
特に今後、桜庭よりも新日での役割が大きくなるであろう立場だけにこれは巻き返し大変でしょうね。

そして桜庭ですが、もちろんこれまでの名場面を踏襲した闘い方には素直に敬服します。
そしてそれ以上にタイトル戦での勝利に向けた“攻防の意味”がこの試合の肝だったと思います。
それについて「プロット」という言葉で片づけてしまうのは、私自身はあまり感心しません。
二人だから出来た試合ですし、二人にしか出来ない試合だったはずですから。
本来交わるはずのなかった二人…だからありがたく思って見ましょう、という気はさらさら有りませんが、現時点での二人にしか存在しないシチュエーションを目撃できた事は幸せに値しますね。
この歴史の積み重ねがプロレスですから。
Re: 紫レガ様
オレも「中邑vs桜庭はよかった」という感想に落ち着きますが、本エントリにあるようにそう思うに至る過程の部分でここは「腕ひしぎ逆ブログ」での紫レガさんの感想と別れてしまうと思います。

あの試合は桜庭の業績をきっちりプロットに編み込み、中邑が生かし、そしてそれを作れるブシロード新日本が凄い。ということで、最終的に「長年異分子であった格闘技サイドの(桜庭はプロレス出身ですが、背景や構図として)スターを取り込みプロットとして取り込んだ」という今の新日本の拡大の仕方がWWEの帝国的な方法に近づいて行く予感を感じたゆえに凄い。実質的に中邑と桜庭の試合の中に試合の主導権やどちらが格上かを示す意味での「闘い」と呼ばれる瞬間は無かった。と思います。

ブシロード新日本wwe化仮説の本道は異種の競合団体であっても取り込んで行き、そして今のプロレスには見れないエッセンスとしてプロットに組み込み興行としての外への波及力と中身の試合のパッケージの完成度を高めることです。なので大晦日でグチャグチャになった小川vs藤田の後始末に関しても、案外今のブシロード新日本なら率先して(藤田がIGF出たというのがマジなら)藤田を取りにいって「IGFの混乱」というものさえエッセンスとしてプロットに組み込みパッケージに出来るのでは?と見えるわけです。

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