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川尻vsグイダ その敗北の意外な豊穣さ

Category: 見立てのMMA観戦記録   Tags: ---
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川尻のUFCデビュー戦での一本勝ちからの2戦目にして早くも試練の一戦であるグイダ戦。これはこれはもう明らかにマッチメイクを一聴しただけで分かるハードなものだ。ソリアーノ以上に現代北米MMAの完成度を持っている類だ。

試合自体は、特にスタンドでの距離感あたりから大きく差が出ており、そこから大きく各ラウンド取られてストレート川尻は負けを喫してしまった。案の定と言っていいのか、日米の競技的な差もわずかに感じ、残念だった。

にも関わらず、どこかそれだけでは無い豊穣さをこの試合の過程の中で感じていた。それもまた日米の競技差に由来しているのだが、特にグラップラーとしての完成度を高めた現在の川尻と、もともとレスリング出身のハイスパートな闘いが売りだったグイダが交錯することにより、どこか日本の良質なメジャーMMAの記憶と、米国のメジャーMMAの記憶が絡み合っている時間を垣間見たからだ。



簡単な競技能力差という面での日米差ってことでは、まず試合開始早々に明らかになる川尻とグイダの身体の動作の連動の差だ。グイダの下半身から上半身にかけて全身がスプリングのように綺麗に連動する動きを元にしているのに対し、川尻は下半身からの動きが上半身にまで繋がっていない。伸びの弱いジャブは素早くグイダにバックステップでかわされ、そのフォローを行うかのようなバックブローという厳しいスタンドでの展開が頻発する。


そこで武器とするのがやはりソリアーノ戦でも見せたようにタックルだ。だが今回は特に早い段階でフラッシュダウンも奪われ、スタンドのレベルも見切られていることや、レスリング土壌でもあるグイダを相手にはやや手詰まりな中でのそれのためほぼ見切られている。この時点で既にかなりの部分川尻には分が悪かったと思う。


だがしかし、スタンドにて最後まで決定打を避け、グイダを相手に徹底して組み技での闘いに拘泥することによる試合の光景によって、オレにはなぜなのか「全盛期の桜庭が、あるいは藤田が現在のUFCでレスリング発の北米MMAと闘ったならば」というような奇妙な感覚が浮かんできたのだった。

ちょっと前のUFCや、UFCフェザー以下軽量級の前身であるWECにてカレッジレスリング発北米MMA選手同士の対戦になる場合、まだ今ほどスタンドや際での詰めも薄かった面もあったろうか、ある種リアルファイト内でのプロレス的というか、MMA内にてレスリングの張り合いを行い、ギロチンやチョークなどで極めにかかるという試合が生まれた。当時、まだDREAMも戦極も活動している中で見たそれは、MMAって枠組みの中で生まれた正しい真剣勝負のプロレスの形だと思ったのだった。


日本の興行格闘技のメジャーな流れでのMMAの名目はどうあれ真剣勝負でのプロレスみたいなイメージを引っ張っていた。にも関わらず前田やら高田などの主要な人物には全く正規の競技経験を持っておらず、その下の世代である桜庭などが本当にレスリングの土壌発で、当時のMMAに合わせて行くことでそうした真剣勝負のイメージを完遂させていった、と見てる。

そう、オレがこんなことを思ったのも、かつてなく日本人選手が北米レスリング系選手と真っ向から組み技での闘いを行っていることからなのだ。

川尻はグイダにトップポジションを許しても、下から果敢に十字を仕掛ける。バックを取られても、そこからアームロックを狙いポジションを取り合う。金網際でグイダがダブルレッグからテイクダウンを狙おうとするところには、なんとパイルドライバーさえ仕掛けるのだ。これにはミノワマンを名乗る前の美濃輪育久のもっとも面白く純粋だった時期の光景なんて想起した。

それをキャリア終盤の川尻がやっている。ここまでUFC参加の日本人で組み技で、しかも北米レスリング系に真っ向から闘うタイプは意外にも見当たらないわけで、川尻がそれを為したことで競技能力的な面から日本と米国のMMAのコンテクスト面に至るまでの何か誤差と言うべきものが、その試合の前面で表現されているかのようだった。この敗北が観客に失望を少なくなく与えたのかもしれないが、しかしオレにはそこに日本と米国のMMAの歴史が不思議な形で交錯するような、PRIDE的記憶とUFC的現在が川尻とグイダの構図から重なるような、豊穣な何かがそこにあった気がした。

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テーマ : 格闘技    ジャンル : スポーツ

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