オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


長谷川穂積

Category: P・M・BOXING   Tags: ボクシング  
だdさimages


IBF・Sバンタム級チャンピオンシップ
長谷川穂積vsキコ・マルチネス 観戦記録


 キコ・マルチネスはガードを固め、ボディワークを生かすことで相手の有効なジャブやストレートを受けることによる制空権確保を減らし、インファイトで決着を付けに行こうとするスタイルだ。それは相手をよく見て、全身を柔らかく使い、いなし、タイミングを計って有効打を打つ長谷川穂積と好対照を為すチャンピオンだった。

 チャベスjr対セルヒオ・マルチネスの構図をも思い出させる強い体幹と堅いガードによって相手の懐へ詰めていき、近距離での強打を武器とする選手と柔らかな動きで距離を作り、正確な打撃を信条とするスタイルの相克。しかしわずか2Rにしてスタイルの陰陽は拮抗を破ることになる。

 リーチは長谷川が上回る。上手く制空権さえ取れれば有効になる。適切な打撃を与え、相手の打撃をボディワーク&ステップを利用して避け、タイミングを測っていき、試合全体を支配していく。長谷川はそのスタイルを完結させていく過程の中で独特のKO劇を生んでいた。だがしかし、マルチネスに対しては全く下がらず、制空権の確定も為さない序盤にてロープ際にまで詰められる。完全に相手のフィニッシュブローの距離であり、下手な避けやステップでの移動による隙で狙われるためだろうか。それとも長谷川の気概なのだろうか。結果、打ち合いが展開される。

 こうした展開も少なくはなかった。見覚えもあるシーンだった。しかし、ここで打ちのめされたのだ。見る見るうちに長谷川の動きが弱まり始める。




 2000年代、それは日本のボクシングにとってはあまりにも悲惨なそれだったのか、それとも豊饒だったかどうかというのはそれは判断が付かない。今考えればこれが日本の興行格闘技のある種の現在を先行していたとも言えるのかも知れない。国内。本場ラスベガス。地上波。本物。疑惑。

 国内においての亀田のとてつもない(ほぼ否定と悪意の)レスポンスと対照的に、粛々と己のスタイルを研鑽する形で価値を作り続けてきた長谷川の功績というのは高く評価されてきた。だが間もなく、さらなる競技能力の競争に晒される統一戦の段階に来て厳しい結果を突きつけられることとなる。

 2010年代に入って、2000年代の国内ボクシングのトピックスであった亀田陣営と長谷川は、現在から振り返ればピークからの落ちてきている傾向にあるには違いない。だが、事はそうであれ試合の中に何があるかだ。むしろファイターの真価を逆説的な形で見られるのはピークを過ぎてからの身の振り方にこそある。

 亀田は2000年代のトリックスターの意味を失い、みるみるうちに自身の戦略をほぼポジションの位置のみに腐心するようになり、それは格下の相手でさえまるで圧倒しない試合に現れていた。亀田のピーク時にはその疑惑すらも国内ボクシング構造の問題を一瞬超えるような意味が発生していたのだが、ピークを越えて衰退しはじめるその過程にはこの世の中のプロスポーツの中でも2つ同じものを観ることはないであろう陰惨が存在している。

 長谷川はどうだろうか。長谷川の衰退の仕方というのは、もう見てるオレとしてはどうしようもなく、悲しいとも言いにくい感情が走る。マルチネスとのロープ際に追い詰められたところでのボディワーク。打ち合い。その長谷川の戦型ならではの光景。それが突き破られる形。モンティエルも、ゴンザレスもこうした長谷川の戦型を完膚なきまで潰すという形ではなかった。

 セコンドの山下会長が語ったという、俺たちはこうしたときでもクリアしてきただろう、あきらめるなという言葉がアナウンサーより語られる。そしてラウンドが始まる。もはや制空権はマルチネスにこそある。長谷川はダウンを取られる。カウントが始まる。崩れ落ち、膝をついている表情を真正面からカメラが映す。わずかな時間、長谷川の表情を映す。この10年の日本のボクシングのひとつ流れが終わる気がした。
 
スポンサーサイト

テーマ : 格闘技    ジャンル : スポーツ

Comments

相手はオーソドックスなファイタータイプだっただけに、アウトボクシングの技術もかなり高い長谷川選手がロープを背負ったあの状態で打ち合いに付き合いきってしまったのはちょっと不用意だった気がしますね。

逆に中盤にかけて試合運びによっては勝てたんじゃないかと思う様な場面も多々あったし、現役選手としての限界はまだ先なんじゃないかなと思いました。
>nokizaruさん

やっぱ2R早々にもらってダウンしたってのはデカいですね。
そしてこの辺の検証はあまり出来てないんですが
長谷川選手の経歴的で高めのフィジカルのファイタータイプをこれまで捌ききれていたのかどうか?の解説なども欲しいというか
2Rのダウンでフットワークが潰された感はかなりありましたね。

階級上げた事によるフィジカルの差が、打ち合いになると目立ちますよね。

Leave a Comment

プロフィール

EAbase887

Author:EAbase887
人気ブログランキングへ

ビデオゲームというフィルターから俯瞰する、現代エンターテインメント総合批評
「GAME・SCOPE・SIZE」もやっております。ゲームの他に映画・アニメ・小説なども取り扱っており、興味があればこちらにも。

人気ブログランキングへ


ひっそりとド偏見アニメネタレビュー「14ー21歳のセックスか戦争を知ったガキのモード」「もスタートしましたので、妙に少なくない格闘技ファンとアニメファン兼用の方はこちらもよろしくお願いします。

TweetCasting

ツイキャス・LIVE放送中はこちらからでも視聴できます



 
検索フォーム
 
 
 
 
 
 
ブロとも申請フォーム
 
 
QRコード
QR