オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


ジョン・ジョーンズの速度3  アンビバレンスを抱えた競技能力とスターの印象

Category: 「見立て」の格闘観戦記録   Tags: MMA  UFC  
2014030420504909c.jpg

<<ジョン・ジョーンズvsグローバー・ティシェイラ 見立ての格闘観戦記録>>




改めて、今のMMAの中でジョーンズのアンビバレンスな成立の異様さ

 ジョーンズvsティシェイラに関してはちょっとくだらない方向で話をする。競技内容で言えば今大会は非レスラー体系の痩身の選手の近年の印象にあるような、ムエタイ的な組みや離れ際や至近距離で放たれる肘の有効を感じさせる一方、フィルvsジョンソンのように両選手ともにレスリング発現代MMAというUFCの基本風景の盤石などを目にする。そうした選手の傾向を眺めるに、今更ながらジョーンズのスタイルには異質さを感じさせる。

 ジョーンズにはアンビバレントな現行のMMAスタイルの二つが兼ね備えられている。そのことが異質だ。それは特に北米と南米の陰陽の現在もクリス・ワイドマンらを代表に北米レスリングトップのMMA転向選手の持つ肉体のスタイルとタクティクスの完成と、ノヴァ・ユニオンの軽量級トップたるアルド&バラオンのような柔術&ムエタイ発の痩身のスタイルであり強力な体幹を元にしたタクティクスの完成というのが為されている現在によってよりはっきりする。

 レスリング土壌発のMMA選手が構築する肉体的強度と柔術・ムエタイ出身発の痩身かつ強度の高い肉体という特徴が併せ持たれることはない。選手らの持ちうる肉体や動作というのは出自となる競技によって構成されるし、そこで進歩した現代MMAメソッドで使える動作に生かしていくよう徹底した調整を掛ける。MMAでのタクティクスを習得した選手は自らがベースとした競技で作り上げた肉体的特性をより強力に発揮しようとする。極端に言えば向かい合う選手の肉体のシルエットを観ればおおよそお互いがどのような戦型を持ちどのような試合展開となるかも判断できるのかもしれない。

 ところが、ジョーンズはご存知の通りレスリングのトップという出自を持ちながらあの痩躯の身体であり、そこで半ばムエタイ的な組や肘の距離を持っているというスタイルを併せ持っているのである。しかも、ライトヘビーという階級でだ。こんなことは今更なのかもしれないが、そのアンビバレントが成立しているからこそP4Pも含めてのトップともいえ、そしてトップはおしなべて技術論では回収しきれない瞬間を試合の中に含ませていく。


 すでにこの時点で競技的な理屈に見せかけ、印象論にすり替えているというくだらない方向にある(もちろんレスリング発でムエタイ的な戦型を実現する選手というタイプもすでに膨大にいるため、ジョンジョンだけが珍しくないからだ)。
 アンビバレントを抱えたジョーンズの異質性はUFCデビューから駆け上がり、ショーグンを撃破し北米レスリング発MMAの典型的なラシャドまでの圧倒に強さとして感じられたのだが、それは対戦相手があの圧倒的なリーチ差や当時では対策しきれなかった戦型に対応しきれない格差から生まれていた。それゆえに高速でスターダムにのし上がりながら「応援し辛い選手」といった評価もいくつか見かけた。ここから本格的にくだらない話をする。




ジョーンズの印象の変貌、王者となって以降のの環境の変貌と階級での水準の変貌

 のちにダンヘンの負傷欠場そして代役としてのソネン戦をジョーンズサイドで拒否して以降、ジョーンズの異形性の印象に変容が訪れる。絶対的な王者、次のUFCのスターを目された男の拒否によってUFC151の中止あたりからジョーンズのその痩身にしてレスラー、ムエタイの混ざるシルエットに弱弱しさのようなものが映るかのように見えていった。

 弱度のある印象に突入し、やがてリーチ差や体格差のある相手・グスタフソンとの対戦に突入した時にはさらにその痩身長躯のシルエットが現実にフィジカル差といった面が際立つことにより弱度の印象をより際立たせる。

 それはこの時点に突入してようやくジョーンズの地力そのものとの拮抗する相手が出てきたとも言えるし、また去年以降から各階級にてチャンピオンを凌駕するフィジカルを持つ相手が現れるという各階級の変動の結果に晒された形とも言える。

 当初のジョーンズの野心と試合内容の圧倒に伴う異形さも、本人サイドの進路と環境の変化、そして階級でのバランスの変化が重なることにより、ジョーンズの持つ異質さは危うく崩れやすいようなものへと変質していったように見える。

 今回ティシェイラもまたこの階級でフィジカルの強度が特化しており、同階級にて数々のランカーを圧倒してきた相手だ。その圧力はまたジョーンズのシルエットをか細く見せる。ライトヘビーのチャンピオンシップは本来ヘビーに期待していたそれを実現するかのように、「一撃がはまれば終わる」という緊張を保ちながら、テイシェイラは強打を打ち抜こうと狙い、ジョーンズはジャブを突きダッキングをして離れる、スイッチを頻繁に行いタイミングをずらしていくことで制空権を取ろうとしていく動きを見せる。

 しかしテイシェイラはジョーンズの巧みさの数々を切り抜け完全に制圧されることを防ぐ。タックルを取られてもすぐに立ち上がりリセットし、ジャブ・ミドル、そして微細な近距離で放たれる肘といったあまりにも細かい制圧打撃の正調や、突如としたアックスキックやバックキックといった変調といったバリエーションを受けても決して引かない。この展開は、ジョーンズが支配的にしているにも関わらず、テイシェイラの圧力はジョーンズを疲労させていったと思われる。全局面にて優位に立つに関わらず、テイシェイラは全局面で完全な制圧には至らせない。そのタフさは、5Rにてジョーンズを流すまでに至った。




ジョーンズのさらなる飛躍・実現するだろうコーミエ戦への展望 

 ライトヘビーも上位が恵まれた体格やフィジカルの強度が高い選手に集約されつつあり、いよいよヘビー級にて驚異的な結果を挙げてきた猛者、ダニエル・コーミエまでもこの階級に転身している現在、UFCの重・中量級のほとんどはその身体的アドバンテージの水準が特に書き換えられている。GSPというエレガンスがその波に飲まれ、ボクシングヘビー級のようなシンプルな打撃戦に集約される形となったヘンドリックスvsローラーが象徴的だ。

 ジョーンズはそんな身体アドバンテージの水準が上昇した中での闘いを強いられる段階に来ている。ジョーンズが台頭した2年前までには体格差に加え、正調の試合の制圧技術に加えてバックスピンエルボーはじめ変調を加えた打撃技術によって圧倒出来ていたが、現在ではグスタフソンやテイシェイラのように現代MMAメソッドを習得したうえで身体的アドバンテージの高い選手が台頭してきたために、ジョーンズの強度が弱度へと転じていく。

 それは去年にアンデウソンも、GSPもさらされ、そしてその波に飲まれた形となったとも言える。前P4Pの代表たる彼らが圧倒的に構築された戦術に加え、時に想像もしなかった攻撃による勝利を得てきたものがフィジカルに圧倒されるという構図を経ている。

 いまジョーンズで最も注目に値するのは、ジョーンズがたった一人でそんなフィジカルの再編成の中で、さらに進歩した制空権制圧技術から多彩な技術による変調という技術で闘うチャンピオンである点だ。「底が見えない」「完璧」と称されてきたアンデウソンも、GSPも逆らえなかったそれにジョーンズがわずか一人で闘っている。その構図ゆえか、圧倒しているにも関わらずジョーンズにはヒヤヒヤさせられるような弱度を自分は観ていた。

 次戦に予想されるのはさらに厳しいフィジカルと技術を持つ、ダニエル・コーミエになるだろう。同レスリングエリートのMMA転向の道程ながら、その構図は真逆だ。コーミエはヘビーから落とし、驚異的なレスリング土壌の身体を作り上げ、そして打撃を持つ。テイシェイラの上位互換的な面を多分に持つ。この試合は今後想定されるだろうジョーンズのヘビー級ドリームマッチの試金石的でもあるし、また時代の波との戦いでもある。
スポンサーサイト

テーマ : 格闘技    ジャンル : スポーツ

Comments

Leave a Comment

プロフィール

EAbase887

Author:EAbase887
人気ブログランキングへ

ビデオゲームというフィルターから俯瞰する、現代エンターテインメント総合批評
「GAME・SCOPE・SIZE」もやっております。ゲームの他に映画・アニメ・小説なども取り扱っており、興味があればこちらにも。

人気ブログランキングへ


ひっそりとド偏見アニメネタレビュー「14ー21歳のセックスか戦争を知ったガキのモード」「もスタートしましたので、妙に少なくない格闘技ファンとアニメファン兼用の方はこちらもよろしくお願いします。

TweetCasting

ツイキャス・LIVE放送中はこちらからでも視聴できます



 
検索フォーム
 
 
 
 
 
 
ブロとも申請フォーム
 
 
QRコード
QR