オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


GSPのドキュメンタリー本編では欲動がわからないままだが、阿部寛が答えを言う

Category: ファイト・シネマ・スコープ   Tags: MMA  
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 時は早い・・・本国で公開された時点でもジョニヘンと死闘の末に判定勝利をするも、タイトルを返上し、第一線から退いたと見られてもおかしくないようにMMAシーンが変貌した直後だ。ここ5,6年くらいの間のウェルター級戦線をある種総出で振り返っているかのようで、今では懐かしくどこか牧歌的にすら感じる。オレが初めてGSPの試合を観たジョシュ・コスチェック戦から暫定王座戦でのコンディットvsディアズの判定問題などなど。どれももう急速に遠い過去のようだ。

 しかしこうしてGSPを振り返るにやはり彼を根源的に稼働させているなにかを見出すことは難しい。奇妙な書き方なので伝わりにくいかもしれないが……去年のアンデウソンが第一線から引いていく中で、ここまでに見せてきた北米vs南米的なコントラストから発せられるエンタメ性と比較して、GSPは全ての格闘技をフラットに繋ぎあわせ、ファイトスタイルを完成させていく過程同様UFCウェルターシーンをフラットにしていったかのようだ。 




 GSPが格闘技を始めた理由は?いじめにあっていてそこから強くなりたかったから…そんなものくらいならウィキペディアを眺めれば足りるそれであり、同様のきっかけで格闘技を始めただなんて人間はたくさんいる。きっかけや動機なんて別にその人間の性格や本質なんてなにも説明しはしない。オレがフォーカスするのはどこまでも「どうしてここまでのことを行えるようになり、そして追い続けようとするんだ?」という選手、いやスポーツだけじゃなく他のジャンルであったっていい、人間がやること為すことの方針を決める欲動そのものだ。

 ドキュメンタリーにはGSPの対照としてニック・ディアズのパーソナリティがフォーカスされる。ディアズは柔術&特異なボクシングを武器とするファイターだが、彼が格闘家として強く駆動するその欲動には治安の悪いストックトンで生きてきたことが元にある。これは誰だってわかりやすい「なぜあなたは格闘家になりあなたはそうなったのか」を理解できる欲動のあり方だ。それにに対してGSPの背景はおおよそウィキペディアを見れば簡単にわかってしまうそれとコーチたちとの練習風景とインタビュー中心だ。ドキュメンタリーのアクセントに白い雪の中の狼と俳句のような格言がフェードインしてくる演出という、GSPのルーツである空手経由の和を持ってくるのだけど、そうしたルーツを無効化するほどにフラットすることを行ってきたGSPに対して誰がそれをまともに受け取るだろうか?

 オレはかなり前にGSPが何もかもフラットにしてしまう、そのスタイルや結果から無機的にしてしまうことそのものに異形性を感じている(今読むといろいろ荒い)と書いて、そこからずっとGSPの堅牢さ、ファイトスタイルの規律の強さの裏打ちとしての異様さを受け取り続けていたし、そして「どうしてここまでフラットに、規律立ててしまうんだ?」というその奥にある欲動があるように見えながら見えないままだった。


 ドキュメンタリーはそうしたGSPの欲動を露わにするような切り口はしない。ディアズらを代表とするように「地元のワル出身のような気性の荒い人間を制圧する完璧、そしてどれだけ挑発されようと最後には和解するベビーフェイス」という形で終幕を迎える。だが本当にそうなのだろうか?

  映画では描かれなかったジョニヘン以降の結果と現在を知っている観客をフォローするように、阿部寛がGSPが休養王者になった理由を説明する。改めて説明されるにオレはそこでハッとしてしまう。「彼は強迫性障害を理由に休養を・・・」こう説明されたときに、あそこまでのフラットさをファイトスタイルで実現することによりウェルターそのものすらフラットにしかねないほどのことをしてきた欲動のなにかがわずかに見えたような気がした。精神の症例を盾に何かが見えただなんて下衆極まりないようなものだが、 本人のスタイルや立場、状況の変動と闘う中でなお完璧を目指そうとするスタンスゆえの軋轢…それはどこから来たのか、子供のころからの先天的なものか、それともUFCで勝ち上がっていく中での後天的なものか。GSPの不安や憂鬱に裏打ちされたフラットで規律の強いスタイル、と簡単に解釈するとする。そこに恐るべき意味があると感じる。
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テーマ : 格闘技    ジャンル : スポーツ

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