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ユン・ドンシク その栄光と名誉の問題

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 プロの興行格闘技を観ているときにしばしば考えるのは栄光の問題だ。その名誉と報酬、はたまたアマ・プロなどなどの移行…今のようなトップが競技環境の整ったMMAのシーンになる以前、そうだな…おおよそ7年か8年前くらいのまだ格闘技バブルの残滓がある頃だったか、まだ様々な価値が乱反射したままであり、興行そのものがより重要だった時代だ。

 あの頃は吉田秀彦をはじめ柔道のオリンピックのメダリストを転向させて興行の火にくべようとする動きが多数あった。もともと栄光も名誉を得ている選手がさらに別の名誉と報酬を得ようとする流れだ。だがしかし、そんな柔道からの転向の中で、格闘技をまともに見始めたオレが特に栄光や、名誉と報酬についてを最初に痛感させられた選手がいる。ユン・ドンシクだ。

 ROAD FCのメインで、福田力戦を控えての再評価エントリ。




 柔道からMMAへと転向するというケースはオリンピアンであろうとなかろうと、日本でも韓国でも、いや世界のどこでも当然のようにある。それはまだいい。問題はそのオリンピアンの栄光にどうあがいても近づくことすらできなかった、という点だ。いまでこそロンダ・ラウジーのような栄光がさらなる栄光を得るような柔道からプロMMAへの転向もあるが、プロMMA転向理由の一端には所属している格闘競技にて事情ゆえに大舞台へ行けなかったためという背景も少なくはない。


 その中でもユン・ドンシクの経歴に関してはより強く、栄光の問題に関して思いが行くのだ。ドンシクは世界柔道で多くの結果を出し、国際大会で47連勝という偉業を成し遂げる。しかし、そうした実績を持っていてもオリンピックの代表に選ばれることはなかった。何故か?そこには韓国の柔道界での政治的な事情が絡むことが原因だった。(これは秋山成勲の柔道の経歴にも大きく関係している)

 ここからはソースが煽りビデオとなので、それこそ煽りゆえの事実違いがある可能性を考慮したうえで記すのだがドンシクはその政治事情ゆえに代表選出の試合の中でどれだけ一本にあたる投げを打っても判定によって無効とされたという。そこで確実な勝利を獲得するには、寝技でのサブミッションによる一本を取ることしかなかった。寝技でのキープの強さや、有名なフィニッシュである腕十字固めというのはそうした栄光から遠ざけられる政治事情のなかで醸成されたものだという。



 こうした苦い経歴でのファイトスタイルの構築のされ方や、2005年のMMA転向というのは本当に柔道での順当な栄光のラインへと遂に行けなかったこと・そこから次のラインとしてプロ格闘技への転向とドンシクの経歴にはアマやプロ、競技や興行といった境目に落ち込む栄光や悲運の問題を強く感じさせる。

 だが、鳴り物入りでプロ転向した数年はその結果は思わしくなかった。いきなりシュートボクセで打撃修行した桜庭和志に秒殺され、柔道時代の一戦がMMAで再戦するというフックで瀧本戦を行うも負け、手練れのクイントンランペイジやブスタマンチらに敗戦するなどデビューから4連敗を喫する。

 他競技にてトップの地位にいた人間が、その肩書のままにプロMMAで洗礼のような敗戦・・・これもまた栄光の問題をオレに考えさせる事柄だ。とはいえドンシクはデビューしてわずか3、4戦目ではるかに場数を踏み、体格も上回るランペイジやブスタマンチ相手に対し判定まで行ったとも言える。培った柔道の技術がMMAに昇華される可能性はあったのだと思われる。





 それが確信に変わるのは2007年、ブロック・レスナーのMMAデビューのチェ・ホンマン戦と桜庭和志vsホイス・グレイシーの再戦をメインに据えたDynamite! USA大会である。しかしFEG谷川政権のあの大会はともかく興行的に最悪の興行だった。チェ・ホンマンは欠場し、桜庭とホイスの闘いなんて当時まだ格闘技をそこまで見ていなかったオレですらも得も言われぬ物悲しさを覚えていた。 

 ドンシクはそこでキャリアのハイライトとなるメルヴィン・マヌーフ戦を行う。HERO’ESで猛威を振るい、興行的にも分かりやすい打撃を序盤から振るっていくのに対しての柔道出身の寝技師という分かりやすい対称のマッチメイクだ。これが暗黒のような大会中、わずか10分にも満たないながら、映画的なシーンすら想起させる奇跡であり、そしてドンシクから映る栄光の問題を最初に清算するかのような結末を見せるのだ。


 ある意味で同大会が桜庭とホイスの再戦で期待されたそれが巡り巡ってこの試合に転化したかのようだ。(実際、ロサンゼルスの競技場の多くにはコリアンタウンからの観客だったという事情すらある)マヌーフの猛打を受け転倒し、左目を腫らしながら、自分の距離や展開に持っていく確信を得ていくかのように組み付き、グラウンドで闘おうとする。第2R、遂に捉えたドンシクが鮮やかにバックから足を刈って腕十字固めを決めるのだ。

 会場は爆発する。ドンシクが両手を上げて目を腫らしたまま笑う。マヌーフはセコンドの胸の中で涙を流す。ドンシクの悲運とされる経歴からのこの強烈なコントラスト、そこに栄光や、名誉と報酬といった何もかもを取り巻く何かドラマツルギー、興行格闘技の中にまつわる不屈、それぞれが昇華されていったかのようだった。

 奇しくも同大会には、チェ・ホンマンの代役としてアトランタオリンピックの柔道で銀メダルを獲得した韓国のキム・ミンスがブロックレスナーに完敗を喫するなどの結果も含め、観ているオレに格闘技の栄光とはほんとうになんなのだろうなと痛感させられたのだ。韓国柔道界の関係の中で異端となった選手が、そこで培った技術により英雄のように映り、五輪の栄光を手にした男が興行のジョバー(負け役、仕事人)のような役割へとプロの場で転倒するのだ。他競技での栄光と名誉を持つものが無残に叩き潰され、汚されるというグロテスクな見世物、いったいどれくらい観ただろうか?


 この勝利を機に4連勝を続けるようになる。ファビオ・シウバや当時のゼルグ弁慶など、組みやグラウンドのキープの能力に難のある相手だったとはいえ、その流麗な腕十字のフィニッシュをMMAの中で実現したことは印象深い。やがてDREAM時代になると対戦する選手もオールラウンダーの水準が増え、組み技やグラウンドのキープ、フィニッシュの対策もなされるようになり簡単には通用しなくなってしまう。しかしそれでもゲガール・ムサシを腕十字で極めるところに追い詰めたほか、のちにストライクフォース王者となるタレック・サフィジーヌに判定勝利を収めるのだ。しかし、その後には一線から遠ざかる。

 数年後の2013年に韓国ローカル大会にて復帰、それから韓国のトップ団体だろうROAD FCのメインにて、福田力戦が決定する。正直、競技的にはもの凄く厳しい相手だ。しかしROAD FCがこうしてメインに据えたことは、韓国MMAの歴史的な評価や実績というものを見ているゆえと感じる。ユン・ドンシクの経歴をみてオレが感じる数多くの栄光と名誉についての問題、それは時を経て収まりの良い場所に行った気がする。
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