オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


時代の終わりと始まり メイウェザーvsパッキャオ

Category: P・M・BOXING   Tags: ---
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 対照的なスターとしてシーンを牽引してきた2人が激突するなんてことは、誰もが望みながらもその実現はありえないものだ。各方面の思惑や問題などなどによって困難となり、好対照であればあるほど遠ざかるのが興行格闘技の常だ。そしてそれが実現すると言うことは、完全に旬となった時代の頂点を意味するのではなくある時代の終わりを意味することがほとんどだ。

 メイウェザーvsパッキャオという史上最大のマネー・マッチが遂に実現する報を聞いて感じるのはこれが夢の実現であるのはもちろんだが、同時にこれでボクシングの時代の何かが終わるんだろうなという印象はあった。

 望まれた対戦の実現らしく、構図が「どちらがチャンピオンなのか」などというスポーツ上の建前以上に恐ろしくシンプルなフィリピンの英雄というベビーフェイスvs数々のスキャンダラスにまみれたヒールみたいな対照になっているのがかえって因果な感じがした。

 複雑怪奇なプロセスによってようやく実現に至った試合は、本当にシンプルに陰陽をどこまでも描く。パッキャオの踏み込み、メイウェザーのL字ガード基調のディフェンシブのファイトスタイルの対照、英雄と悪童のパーソナルの差は試合内容の細やかな反則にも現れるし、会場の歓声はシンプルにベビーフェイスに寄せられる。

 夢のビッグマッチは薄目で観さえすればベビーフェイスが難攻不落のヒールに対して攻めたてているかに見えるだろう。望まれた対戦はある意味では夢そのもののようにシンプルな対立構図であるかのようにラウンドが重ねられる。この試合が実現したことの過剰なまでの影響で、普段ボクシングを目にしない人でも観たことなのだろう。


 だが興行の表面が夢で出来上がっていても、どうあれ格闘技の現実はそれをたやすく覆していくだろう。とっくのとうに識者は早い段階でメイウェザーが上回ることをわかっていたし、パッキャオの踏み込みが届くかどうかは昨今のパフォーマンスを観るにオレもまったくわからなかった。現実にはパッキャオの打撃のほとんどはヒットに至らず、メイウェザーが有効打を与え続けるという形になりポイントを奪うという例の必勝パターンのそれだった。試合が終わった時にはベビーもヒールもシンプルに見えたはずの構図は全て転換し勝者が余裕で敗者を湛え敗者が不服を見せるみたいになってしまうあたりも渋い現実の一つだ。

 複雑な事情で長引いたはずの夢の実現の試合は、むしろシンプルな対立構図で観ることが出来、そして最終的には競技能力の現実によって目が覚めていくと言う途方もないビッグマッチ特有の現象を味あわせてくれた意味で非常によかった。オレはあまりに期待した試合がはじまったときいつも「これから数分、十数分後にどちらかが破れ、どちらかが勝つなんてことがどうあれ決まってしまうのか」なんて思う。

 しかしだ、一方でもしかしたらこの試合に勝敗を取り沙汰するよりも、さらには既に旬をすぎたのではという競技能力よりも、結局のところは長い年月の中で培われたパッキャオとメイウェザーの関係そのものが彼らの試合のパフォーマンスの中に全て集約された瞬間がいくつも見られたというそれでよかったのかもしれない。下降傾向に見られたはずのパッキャオは過去になく入れ込んだ、気迫ある攻めや打開を行っていたし、メイウェザーも決して全面的に余裕だったとも見えず揺るがされた瞬間もあった。そうした攻防の瞬間瞬間の中に何年も実現せず、時には相手を挑発し、罵りさえもしながら今日までの対戦の機運を上げてきたそれが


 そして確実にある時代が終結したんだな、ボクシングはこれからどんな形で次のスターが形成されていくんだろうな、なんてしめやかな余韻が残ったのだった。メイウェザーは9月に引退する(適当ぶっこいてるだけかもだが)というし、パッキャオを次見る時はもしかしたら今のアンデウソンを観る気持ちに近くなるのかもしれない。夢の試合が終わったあとは圧倒的な現実がどうあれ待ち受けていて、観る方もキツい気持ちになることは少なくないのだが望んでその冷たさも見届けたいとこだ。興行格闘技を望んで楽しんでるのはそういうふり幅を味わえるからだよ。
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