オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


坂口征夫の入れ墨

Category: プロレスの生む物語   Tags: ---

 

 廃墟からDeus Ex(ウォーレンスペクターによる初代)をやっています。

 遂にニューヨークでのMMA解禁というジャンル前進を示すニュースが出た一方、なんかUFCが中国資本に売却するとか、マクレガーが引退するとかしないとかでもめているうちに何とあのメイウェザーと対戦するニュースなんてのが飛び交っており、なんだかあっち側の世界に突入しているうちにヴェウドゥムがミオシッチに序盤からジャブをもらっておりKO負けに…という現実になっている始末。UFC200はレスナーいきなり復帰!もういや~!手ごたえあり!ということで、今回はふと思い出すとあるMMAとプロレスを跨いだ選手の話だ。

 誰しも勝敗に関係がなくその人となりや背景の方で強烈に印象深い選手がいるだろう。いま時々思い出すのはかつてパンクラスでMMAデビューし、現在DDTでプロレスラーとして活動してる坂口征夫だ。

 




 プロレスと格闘技を跨ぐということはそりゃあもうアントニオ猪木あたりが業界を焼畑農業にしていくことになる「プロレス最強で興行やるから他ジャンル潰すべし」みたいな意味で強化されてきたイメージで、洗脳された元オリンピック銀メダリスト小川直也の全盛期の狂気や永田や中西といったぜんぜん純粋なプロレスサイドにいる人だったりが犠牲になったりのまあなんというか、70年代の梶原一騎みたいな世界が終わって前々回の子殺しや仲間殺しのスキャンダラスみたいのに繋がってしまったと言うか。

 でも一方で前田日明や佐山聡、船木、高田らみたいな旧UWF勢における「プロレス最強」のラインになると急速に話が違って来る。賢しらに生きれば「プロレスと格闘技は定義がまったく別である」という判断は圧倒的に正しいのだが、なおもプロレス最強、カールゴッチイズム最強、昭和新日本の道場最強みたいなそれに挑み、崩壊し、結果的に時代に完敗していくところまでも見せつけたあれは昭和の連合赤軍にも例えられた一方で、同じく昭和のフレ-ズである青春の蹉跌なんて言葉が似合ってくる。

 オレが格闘技とプロレスの境界を超えることである意味でもっとも豊饒であるとおもうのが、青臭いが結局なんらかの蹉跌とその回復という部分である。決してどちらのジャンルが興行として上かどうかというマウンティングではなく、そうした何らかの蹉跌がどこかで起きて、そしてそれがどこかで取り戻される(かに見える)ということをどっかで見たがってるせいかもしれない。これってドラマチックなことだと思うんだけど、実際にはそのドラマは業界的には煽りVの3,4分程度のとても地味な位置で終わってしまう。プロレスにせよ、格闘技にせよ、興行と競技の現実のなかでウェットなそれは思ったよりも2次的で3次的なものだったりもする。




 坂口征夫はそうした蹉跌とその回復という意味でとても魅力的だ。金髪に膨大な入れ墨という姿は、それは怖いとか近寄りがたいという印象と別のところに逸れる。よく言われているようにあの猪木の新日本プロレスのなかで保守的な立場であった坂口征二が父親であり、そして好青年で好青年が過ぎてゲイにやたら人気ある俳優・坂口憲二が弟であるという日本のプロレス的にも芸能的にもスムーズで、しかも堅実なイメージでキャリアを重ねてきたという坂口一家の対しての裏打ちのようである。(そしてあまりにもベタでもあるくらい)

 幼い頃より新日本の道場でライガーなどの選手と触れ合う中で自分もプロレスラーになるのだなと感じていたとのことで、中高時代に柔道部に在籍していたころには菊田早苗とも出会い、そこで鍛えられて順当に行くのかと思いきやそんなことにもならない。そこには父・征二との折り合いや反抗からスムーズに2世プロレスラーとはならないのだ。考えて見れば昭和平成の著名プロレスラーの息子がそのままプロレスラーになる、というケースは藤波だとか橋本など少なくはないのだが、坂口征二の家族がこうして拗れる形になるというのも出来過ぎかもしれない。(文字通りのドラマ脚本の人物設定っぽいでしょ)家族との問題の中でプロレスラーにならずにしばし別の進路に進むのだった。

 格闘技の本格的なスタートはかなり遅く、30代に入ってからで、そこでかつての菊田早苗との関係からパンクラスでデビューする。

 こういう背景はドラマツルギーにあふれているのだが、しかしMMAの現実はそんな事実を汲みはしない。勝敗は決してよくはなかったし、大晦日のDynamite!に抜擢されたときには、ここまでに上げてきたような父・征二や弟の憲二とのコントラストで煽りVが作られ、アンディ・オロゴンと対戦するのだが敗戦。そのドラマツルギーを補強しない苦い結果になる。しかし坂口の試合はほとんどが1RでKOか決着が付くという、まるでアウトサイダーの試合みたいな素手ゴロみたいな気概の試合ばかりだ。そこには賢しらな戦略も何もない。逆転敗北という形が多いのだが、逆に序盤こそ制空権の設定を誰しも図る中、その読みあいを無視して速攻で突っ込んでくるため見せ場が作れるのだと思う。

 やがてMMAから離れ、ようやくU系ルールの試合なんかを挟んでついに本格的にプロレスラーになる。のだが、そこはなんとDDT。正直意外性の強い団体でのキャリアになるのだが、そこまでに至る頃にはここまでに付きまとっていた坂口征二や憲二との関係といった文脈でもなくなっている。そうして初のベルトを獲得するまでに至るころには、

 今年に鈴木みのるとの対戦があった。考えてみればこの二人の対戦と言うのは決して唐突でもないかもしれない。鈴木こそU系が慢性的に持っている格闘技とプロレスを跨ぐことで張り付いている強さや実力に関しての蹉跌と回復をかなり早い段階で達成したプロレスラーだからだ。この二人の相対は意外性というよりもそうした文脈の方がオレにはしっくりくる。格闘家が片手間でプロレスに出る時は初っ切り以上の何物でもない、豚も食えないものなのだけど(IGFを見ればいい)、何らかの挫折の中でプロレスラーでやるしかなくなった選手ならば逆転する。

 蹉跌と回復というのはドラマツルギーとしてはこれ以上ないほどありがちだし、だからこそどこか感動的なものでもある。だけどなかなかそれは興行と競技の現実にはフィーチャーされない。しかし、本当はどこかで大なり小なり選手のバイオグラフィに影を落としているんじゃないかな、と。だってアマとプロの境界から他競技からの転向などなど、相容れない境界がそこかしこにあるおかげで本当はどこかで引っかかるようになっているように思う。

 坂口征夫は表向きは家族の問題で裏向きにはジャンルの問題など、そうした側面で凝縮されていて、実績以上にドラマティックだ。以上、ウォーレンスペクターって誰?というのはゲーム界におけるマットヒューズみたいな存在ですという情報を残す廃墟からでした・・・

 
スポンサーサイト

Comments

Leave a Comment

プロフィール

EAbase887(葛西 祝)

Author:EAbase887(葛西 祝)
mail: kyukakukaizoudo@gmail.com

人気ブログランキングへ

ビデオゲームというフィルターから俯瞰する、現代エンターテインメント総合批評
「GAME・SCOPE・SIZE」もやっております。ゲームの他に映画・アニメ・小説なども取り扱っており、興味があればこちらにも。

人気ブログランキングへ


ひっそりとド偏見アニメネタレビュー「14ー21歳のセックスか戦争を知ったガキのモード」「もスタートしましたので、妙に少なくない格闘技ファンとアニメファン兼用の方はこちらもよろしくお願いします。

TweetCasting

ツイキャス・LIVE放送中はこちらからでも視聴できます



 
検索フォーム
 
 
 
 
 
 
ブロとも申請フォーム
 
 
QRコード
QR