オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


突如とした石井慧のMMAと並行してのアメリカ柔道代表プラン/2010年の日本柔道史

Category: 欧州構造体系   Tags: ---
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「石井慧 アメリカ代表で16年五輪!?」

日本人でも金、アメリカ人でも金!?北京五輪柔道男子100キロ超級金メダリストで総合格闘家の石井慧(23)=アイダッシュ=が9日、都内で、柔道の米国代表として2016年リオデジャネイロ五輪に出場する仰天プランをブチ上げた。米国市民権の取得を目指す石井は、都内の自宅マンションを引き払い、米ロサンゼルスにアパートを賃借。移住への準備を着々と進めている。(スポーツナビより)
 


「杉本2冠、上川初V=日本、金は最多の10個―世界柔道」

 日本で7年ぶりに開催された柔道の世界選手権最終日は13日、東京・国立代々木競技場で男女の無差別級が行われ、女子は杉本美香(コマツ)が優勝して78キロ超級との2階級制覇を達成、男子は初出場の上川大樹(明大)が金メダルを獲得した。杉本は日本女子として初の同一大会での2冠。上川は決勝で100キロ超級3連覇のテディ・リネール(フランス)を延長の末に破った。
 1階級に2人(無差別級は4人)まで出場可能となった今大会で日本が獲得した金メダルは10個。男女同時開催となった1987年以降、男女合わせて最多だった99年バーミンガム大会(英国)の8個を更新した。日本のメダル総数は銀4、銅9を加えて23個。 

<<BGM・友川かずき-「魂」(文字クリック)>>

 日本柔道界の一種の権威をバックとした潔癖なまでの閉鎖性というものを、格闘技に転向したオリンピックメダリストの興行上の扱い方や、たびたび現れる柔道からこぼれたような形で転向したような選手たちなどから感じていたが、石井慧のMMA転向以降にそうした閉鎖性とそれに伴う膠着の問題などが石井をジャンクションとして見通せた感すらあった。 


「瀧本が柔道復帰!プロ格闘家から指導者で出戻り1号…シドニー金 PRIDEで活躍」

 シドニー五輪柔道男子81キロ級金メダリストで、総合格闘家に転向していた瀧本誠(35)が、指導者として柔道界に復帰することが5日、明らかになった。6日に都内の全日本柔道連盟(全柔連)を訪れ指導者登録する。瀧本は04年12月にプロ格闘家への転向を宣言し、これまで11試合戦ってきたが、柔道普及の道を選んだ。同じく柔道金メダリストの吉田秀彦(41)も柔道界へ復帰するが、登録上、指導者としては瀧本が復帰第1号。これまでに例のない道を歩む。 
(スポーツ報知)


 そしてここに来ての格闘技転向組の吉田、瀧本らの柔道界復帰というニュースなどが舞い込んでくるが、こうして格闘技サイドにいた人間の古巣への帰還によって、個人的に期待したいのは旧来の柔道界とプロとの境界の軟化で、KIDや宮田選手が国体に出場できたりオリンピックを目指す事が出来たりというような日本のレスリング界のようにまでなってくれればとまでは言わないが、しかしうっすらと感じるのはこれが逆に柔道界の硬化を意味してんのかなあなどとも思う。
 元々プロだった人間の引退からの復帰期間を1年に短縮したという事情も、石井慧や泉浩選手らの格闘技界転向が相次ぐことによる人材流出に対してのものだと聞くし、一時的な解説者としてのレベルから指導者まで「プロ格闘技界からの復帰」というケースをあまり知らないゆえに判断がしかねるが、これがまた外部の遮断を深める契機になることも考えられる気配がある。

 世界柔道のTV放映にて司会の席にて吉田秀彦氏が座っていた姿は、格闘技組の古巣への復帰という最初の光景という意味では興味深かった。ほぼ何もしていなかったからだ。無論今年4月に引退したばかりで、本格的な柔道界の復帰の期間に満たない故に正式に解説者としての位置につけなかった、とは思うのだが、むしろそうした復帰の期間に満たなくとも番組の顔としての位置にいることのその意味は、五輪メダリストという価値を保持したままプロ格闘技を経験した五輪メダリストの復帰という一種の権威性の強化というように見え、番組中で当たりさわりのないことのみをコメントし、拍手しているその姿にはデジャヴすら感じた。それはプロレスから時代状況の中で格闘技と闘うことになり、そして厳しい結果を突き付けられる中でかつての弟子の「僕と真剣勝負してください!」の言葉をはからずも引退試合にて実現した、PRIDEにおいての高田延彦氏の解説席の光景だった。

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 柔道というのは日本格闘技においては講道館という高い権威によって保持されているものだが、その権威のベースメントにオリンピックを象徴とした欧州圏による価値観が支配的でもあるという違和感はあの横文字での「JUDO」という表記に現れていると思う。かの「1976年のアントニオ猪木」を執筆した柳沢健氏によるゴン格5月号・木村政彦特集での柔道についての記事にて「わが国で生まれた柔道は、完全にフランス・スタイルの「フレンチ・ジュードー」になってしまいました。私たちの知る柔術が「ブラジリアン柔術」であるように。」との意見を残しているくらいで、「講道館館長と全日本柔道連盟会長を兼務する上村春樹氏は、国際柔道連盟の理事ではあるものの、議決権を持っていません。つまり日本の発言力はゼロということです。」「フランス人は、自分たちが正しいと思う方向へと柔道の国際ルールを変えて行きました」という現状らしいのである。

 「柔道の歴史は講道館の歴史です。ですから、講道館の歴史には「驚異的な寝技師によって敗れた」というような歴史は残されて居ないのです」という記述も衝撃的なこのゴン格5月号木村政彦特集はそのような形で権威を保持し、半ば無菌的とまでの状態となっている日本柔道界を、今だ「プロに関わっていた」という経歴から柔道殿堂に入れず、七段に据えたまま昇段もさせられていないという木村政彦氏の名誉を格闘技側から再評価し、回復を試みる ということを中心に外部から見た日本柔道史への批評という企画で、力道山や大山倍達らが歴史的に評価され格闘技史のルーツとなる存在となっているのに対して、木村政彦はプロレス・格闘技史的には「力道山にガチで倒された柔道家」という評価で日本柔道史的には「プロとして活動したことから講道館の価値に外れてしまったことで歴史から外される」という評価となってしまい、先の2人に勝るとも劣らない業績を残しながら実質的な評価が格闘技史とも柔道史ともに鈍いものだったことからの再評価ということが同時に現在の日本柔道界への痛烈な批評となるという屈指の企画と思う。



 そんな中で「木村政彦を継ぐ」と言われた石井慧が、世界柔道の開催中に「帰化してアメリカの代表として柔道の五輪に出場する」といったことの意味は深い。実際にアメリカ代表になるかどうかではなく、石井の意味というのが柔道史的にも「金メダル獲得」という最大の権威を保持していながらまず格闘家に転向するという事で日本柔道界の閉塞に対して一つの打開を生んだと思う。木村政彦の名誉回復という企画も、自分は石井の転向というのが一つのきっかけとはなってるように考えている。

 「アメリカに帰化」という突拍子のなさは柔道から離れながら、日本柔道界の閉塞と権威を嘲笑っているかのように見えるニュースだった。吉田・瀧本らメダリストが古巣に帰還していくことに見られる権威の回復に対して、格闘技転向といい、このように振舞うことで一種のバレた聖域でもある柔道界に対しての外部からの視点を暗に要求しているように見えた。五輪金という最大の権威を手にした人間による権威への嘲笑という事態に関して、この時代らしい、「権威に実体が無く、懐疑が生まれ始める」という2010年代らしい柔道史の意味を感じるのだった。
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