オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


マクレガーは言われるほどスタミナに問題なくて、ほぼメイウェザーに心理戦で完敗した

Category: 「見立て」の格闘観戦記録   Tags: ---
20170827-00000002-wordleafs-0b58c17bda41e04e654b5ff76db417af6.jpg

廃墟では横から花火を見ています。異種格闘技戦の醍醐味とは格闘技術のコンペティティブな点というより、本当のところは両サイドの心理戦の駆け引きにこそ緊張感がある。思い返しても純粋に技術のみで盛り上がる試合になった試しがない。 

マクレガーvsメイウェザーは正直言ってボクシングの技術コンペのみで観ればやや盛り下がる試合だったものの、この試合に漂っていたマクレガーとメイウェザーという際だったパーソナリティゆえに生まれる心理戦は過去になく見どころがあった。異業種の相手をKO出来る可能性は距離が見切られる前のほぼ序盤しかないという仮定で見たとして、マクレガーが相手を動かして打撃を打ち込んできたのに合わせて精確に打ち抜くスタイルから逆算していくと、戦前からの膨大な挑発を繰り返していたの全てはメイウェザーを動かすため、あの堅牢だったはずのジョセ・アルドをまさに戦前からの挑発で序盤に動かしたように、メイウェザーを感情的にさせた動きに合わせる目論見があったのではと見てる。

なにせこの試合を実現させるためにずっとSNSやら画像合成やら挑発して動いていたんだ、最後の最後の瞬間まで釣り出し、動かしてやろうとするだろう。どんなに天才であろうがボクシングでの実力差は歴然、序盤から中盤までラウンドの間に相手の揺らぎを作り出すことに腐心していたとしても不思議じゃない。

だがメイウェザーの性根の悪さはその先を行く。冷静に相手をかわす素振りから唐突な苛立ちをみせたり、ほとんどズルするみたいにまさかのところでKOしてきたりした相手だ。マクレガーはリング外でこそ傍若無人なイメージではあるが、実際の試合のほとんどは誠実かつまっとうな印象だし、意外にアイポークしてきたり極めてタチの悪い立ち回りをしたりという後味悪いファイトは目立っては無かったりする。ヒクソンに影響を受けた奇妙なワークアウトなど内面のところはマスイメージとは別物だと思う。少なくとも自分はマクレガーの試合の後味は勝っても負けても悪くはならない。内面のところで悪意ある感じの選手のなにか引っかかる後味は感じていない。(もちろん観る人によって異なるし、オレが典型的な先入観で観てて間違ってるって可能性もある。)

しかし、メイウェザーの試合ではたびたびそれを感じるのである。戦前からのマクレガーの挑発にさえ、うまく応じるくらいずっと巧みな相手だ。



Call me C.J Watson! www.macmojiapp.com

Conor McGregor Officialさん(@thenotoriousmma)がシェアした投稿 -



マクレガーによる挑発画像。メイウェザーのDVのきっかけになった内縁の妻が浮気してた相手の名前を名乗ってベルトを掲げる踏み込みぶり。

マクレガーがジョセ・アルド戦から続ける心理戦に真っ向から応じられた選手はMMAではいない。ところが、メイウェザーは起用に相手の仕掛けに乗ってやり返して見せる。クレバーかつ独善的な性格はマクレガーより遥かに質が悪い。この試合が実現するまでに行われた両者の挑発による心理戦はほとんどイーブン、上のインスタ投稿みたいにメイウェザーのプライベートにまで踏み込むほどの下品なやり方をしてまでマクレガーが相手を動かしてやろうとする挑発さえも、メイウェザーには通じ切っていない。

ほぼありえないジョークかと思いきや、ついに実現したこのマッチアップが実現した時点でマクレガーサイドの勝利だ、という人も少なくはないけども、更に突き抜けてあのメイウェザーを少なからず動揺させ、崩した所を狙うところまで見込んでいたとするとこの挑発の通じなさは実際の試合にまで及ぶことになる。

マクレガーは言われるほどスタミナに問題はなかった

識者の言う通りチャンスは序盤のラウンド、相手は引退発表から2年のブランク、ここで過剰なまでの挑発からメイウェザーが仕掛けてくる万が一を狙っていくのがマクレガーの戦略かと思われる。マクレガーのフィニッシュは、相手の制空権ぎりぎりの距離に離れつつ、相手を器用に動かしたところに合わせることにあるから。制空権に基本的に乗らないスタンスということではメイウェザーとマクレガーは若干繋がっていたりする。なので当初はもっと退屈な試合展開も予想していた。

しかしMMAでのスタンド技術が実際のトップ選手のボクシング技術の深さのまえに通用しなくなっていく。試合がスタート、マクレガーは真っ向から攻撃を仕掛けるが、メイウェザーはまさかのオーソドックスなガードを上げながら中間距離から測るスタイル。あのL字ガードから削ってくスタイルじゃない。しかもあんまり自分から動かずに、マクレガーの攻め手を見切ろうとしてる。

お互いの制空権が見えてない1Rにはマクレガーはメイウェザーの動きに合わせたアッパーを当てたのだが、それも後から考えてみればメイウェザーに「こいつはどの距離でどう当ててくるのが得意なのか」を分析させたに過ぎなかった。マクレガーはその間、随所に後ろ手のノーガードなど挑発を交えるのだがまるで乗らない。じっくり3Rかけたメイウェザーがとった戦法とは、まさかのものだった。

それはガードを上げて相手の近距離に潜り込んでいくスタイルである。チャベスjrや村田諒太が得意とする、高いフィジカルを武器に相手の攻撃をガードしつつ懐に潜り込んでいき、圧力をかけて消耗させる効果を持つ。中盤に入る頃からメイウェザーはこのスタンスで圧をかけ始める。マクレガーはこの圧力を跳ねのけられない。いくら天才的にクリティカルが打ててもこの技術をしのぐにはボクシングの技術が必要であり、まさにメイウェザーの深みを感じさせる展開となった。

メイウェザーがこの戦略を成功させたことはボクシング技術の圧倒的な実力差を意味していた。普通フィジカルに勝る選手が使う戦法なんだけど、フィジカルに劣るメイウェザーが普通にできてるってことはマクレガーの攻め手をすべてガードできると見切ったからだし、なによりMMAのスタンドの特性を見事にボクシングの特性で殺している。

この展開はMMAに例えれば、正直メイウェザーにテイクダウンされて脱出できずパウンドされているような感じだ。クロスレンジ~至近距離で圧をかけて角を突き合わせる展開は現在のMMAには存在しない。ステップワーク&ロングレンジというMMAのスタンドの特性が、シンプルにガードをあげて適切に対応して圧をかけていくということでみるみるうちに削られていくのである。

マクレガーはスタミナがないという意見もあるが冷静に振り返るとむしろ逆だ。よくここまでの条件が揃ったなかで10Rまで持ったと思う。初めての12R制。初戦で相手はメイウェザー。おまけに挑発を繰り返してもほとんど動じない。しかも自分の想定していた展開から違う動きをしてきて、自分の得意な動きを封じられてしまうというすべてが重なったなかでここまで持たせたと思う。自分の展開が出来ずにスタミナロスしない選手はいない。もっと早いラウンドで敗れていた可能性もある。

序盤のチャンスにかけたここまでの心理戦をしのいだ後はもっと後味の悪い結果になってもおかしくはなかったところなんだが、意外にも清涼な後味なのはマクレガーの健闘と、メイウェザーがボクシングの(わかりやすい)深みを見せて試合を成立させていたことに尽きる。


スポンサーサイト

Comments

Leave a Comment

プロフィール

EAbase887(葛西 祝)

Author:EAbase887(葛西 祝)
mail: kyukakukaizoudo@gmail.com

人気ブログランキングへ

ビデオゲームというフィルターから俯瞰する、現代エンターテインメント総合批評
「GAME・SCOPE・SIZE」もやっております。ゲームの他に映画・アニメ・小説なども取り扱っており、興味があればこちらにも。

人気ブログランキングへ


ひっそりとド偏見アニメネタレビュー「14ー21歳のセックスか戦争を知ったガキのモード」「もスタートしましたので、妙に少なくない格闘技ファンとアニメファン兼用の方はこちらもよろしくお願いします。

TweetCasting

ツイキャス・LIVE放送中はこちらからでも視聴できます



 
検索フォーム
 
 
 
 
 
 
ブロとも申請フォーム
 
 
QRコード
QR