オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


マイケル・ピスピンと秋山成勲/第2次リングス・アウトサイダーの対米軍/局地的な力道山

Category: MMA   Tags: MMA  UFC  
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 もう日本メジャーMMAが自己像を形成出来ない領域にまで追い詰められている現状、業界の再構築はUFCが日本に上陸し、それをヒエラルキーの最上に設定した方が手っ取り早い、などとさえ言われている中で、結局のところアメリカにアイデンティティを設定してもらうほうが早いのでは?という現状での、秋山成勲選手と前田日明主催のアウトサイダーに映るものに関して。

 冒頭から陰鬱めな内容で申し訳ないが、ここのところのDREAMを代表とした日本メジャーに見られる、地上波含む凋落の仕方が深く、「試合内容」「事前の宣伝」「番組の構成」などなどに対しての部分的な批判が舞い踊るが、もはや事態はそういう表層的な問題ではなく、石井慧の試合が沈黙によって迎えられ、K-1MAXの世代交代を見せたい日菜太がサワーによってチョークで沈む、という試合がシュートボクシングにて行われるという光景の中で、そもそもの選手や大会が観客らに対して自己像を形成していき、そこでプロとしての試合を披露するとかそういう当たり前の前提自体が崩れているとか、そういうことを思わざるを得ない。

 日本MMA史とはあらゆるジャンルの破壊の歴史だとかここのところずっと考えている中で、PRIDE崩壊に見られる、いよいよ破壊を終えた歴史がどこに行くのか?というのを見ていってるときに現れた光景ってのが見事なまでに「日本のアイデンティティ崩壊」みたいな状態になっていて、だから「ガラパゴス」なんてクソ以下の批判の文句が流行り出すという現状で、アイデンティティの再構築にはなんにしてもやはり「UFCの日本上陸」だとかアメリカが絡んでこざるを得ない、なんて苦笑も凍りつく現状で、今の自分には秋山成勲が英国のエース・マイケル・ピスピンと闘うことや前田日明の「アウトサイダー」の対米軍という仕掛けが、戦後からの日本近代史とその成立ということに関して「戦後、力道山が憎きアメリカ人を倒すというプロレスを行ったことで国民に勇気を与えた・・・」というエピソードがたびたび脳裏をよぎる。

 ことの善悪や真実がどうあれ、このエピソードが日本戦後史のいち光景であるだけに終わらず、日本においてのプロレス・格闘技がもたらした敗戦に心を痛めた国民の心にカタルシスを与えた神話として、格闘技が為した作用として今だ語り継がれているとともに、この戦後初期に形成された日本とアメリカの関係に対しての 基本構造というのも紆余曲折あろうがやっぱ変わってはいねえのかもしれねえな、などと静かに考える。

 今年4月の五味のケニーとの敗戦、青木真也のストライクフォースでの敗戦という事象を「戦後」というアナロジーで語るのがいくつか見受けられ、自分にしてもリング・ケージ問題とか叫ばれていたのを見ていて「ケージ=金網=鉄条網=米軍基地」などとイメージが現実の日米の構図と格闘技が重なっていく感じがあり、その時の気分をこのエントリにて書き連ねたが(クリック展開) 、2010年代のこうしたアメリカとの関わり方は果たして歴史の退行なのか否か?というのが今の気分で、日本MMAが今もっとも闘いのあるポイントを設定するならやっぱりそこにあると思う。 

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 まあそれにしても、「日本がアメリカと闘う」という構図に物語性を見出す、「闘い」を見出すという点に関して戦後からどれだけの変化があったのか?そして現在というのは日本の自己喪失、そしてアメリカを求めるという事で「第2の戦後」とでも経済上の問題まで含めて言えるのではないか?などと考えが錯綜するのだが、とりあえず2010年現在の日本格闘技というのはやはり戦後の力道山から連綿と続く歴史が一度断たれたものなのでは?とさえ感じている。

 この問題はものすごく単純に設定していて「どこまでを連綿と繋がる日本格闘技史に設定しているのか?」という面のディテールが荒いのは承知であるが、現在の日本MMAの自己喪失感というのがあの石井VSミノワの会場の沈黙などに見られるように感じ、今の日本のMMAが世間どころか主催者・観客全てが「MMAMMAとして捉えられていない」「しかもヴァーリトゥードまたは異種格闘技戦に回帰するという方法も「MMAをMMAとして捉える」選手側の意識としては完全に化石化していておりフックにならない」みたいに現実の競技者の意識と観客側の欲望がまるでクロスしない現状を前に、なんというか今は完全に「戦後史が一端終わって、そんで自己喪失したのち再構築にアメリカ化が不可欠なことによる新たな戦後の気配」みたいなことを考えてしまうのだが、そんな中で秋山と前田日明から感じるのは新たな戦後の気配にフィットするややメタな意味での力道山性だ。

 日本で一番気持ち良く見とれるラインの基本構造で「諸海外のパワーバランスを現実的に受け入れている中で、日本人がその受け入れ先と闘うことを演出する」みたいな部分は、こうして近代化が達成されてる現在からすれば無論「外国人と闘う事=日本が世界の近代に劣らないという自意識の充足=国民的熱狂を生む」なんてことはなく、また秋山や前田の勝利が求められている以前に、彼らがファンから多大な期待を掛けられているかどうかといえばあの「青木VSメレンデス」のような明快な「対北米」とも別だ。それよりも、この現状の中で彼らが行うことの気配なのだ。

 秋山と前田日明から今強く感じるのは、こうして戦後からの歴史が一端断たれたように感じられる中で、そしてまた再構築にアメリカが絡んでこざるを得ない中で、日本格闘技史の核にあったものとは何か?という、近代史の始原とでもいうか、「戦後、力道山が憎きアメリカ人を倒すというプロレスを行ったことで国民に勇気を与えた・・・」という原点を思い起こさずにはいられず、秋山とピスピン、前田日明の「アウトサイダーの対米軍」は、現行のDREAMの青木・川尻らの直面する「対北米MMA」の具体的な競技上の強弱を競うラインと別に、「日本MMAアメリカ敗戦による戦後」というアナロジーの中では、それがやけに印象深く感じられる。
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Comments

リンクを貼らせて頂きました。
宜しくお願いしますm(--)m
Re: slamdown 様
ありがとうございます!よろしくお願いします。
今晩は
泰山です。こちらでは初めまして。
twitterではお世話になりました。
突然消えてしまい申し訳ありません。

改めて、拙ブログに「オウシュウ・ベイコク・ベース」を
リンクさせて頂きました。
今後とも宜しくお願い致します。

ps.『復讐の弾道』は中期大藪ノベルの傑作です。
願わくば『野獣しすべし』『汚れた英雄』(特に1,2巻)
あと初期短編を是非お手に取って頂きたいです。
Re: 泰山さん
コメントありがとうございます!

ほんとうにツイッター上で泰山さんと交流出来たことは有難かったです。

こちらもリンクさせて頂きました。よろしくお願いします。

PS.泰山さんのブログタイトルは大藪作品からきていたのか!とようやく気付きました(笑)
追伸
勘違いされてる方も居るみたいなので補足として。
『汚れた野望』は『復讐の弾道』の原題で、こちらの方が先です。
後に単行本化された時に『復讐の弾道』に改題されたのであって、
決して『汚れた英雄』のお溢れを狙った訳ではありません。
おそらく手にされた双葉社版は、大藪氏没後に原題に戻し刊行されたものです。

twitterは(特に「あの方」は)憶測や思い込みでの発言が多いので(苦笑)
不明な事は自力でトコトン調査された方がいいですよ。
Re: 追伸

> 決して『汚れた英雄』のお溢れを狙った訳ではありません。
> おそらく手にされた双葉社版は、大藪氏没後に原題に戻し刊行されたものです。

追伸にて情報ありがとうございます!1996年の再刊のバージョン「汚れた野望」を購入したものの、ウィキペディアの作品リストに記載されておらず、後で巻末を調べてみたらわかりました。

> twitterは(特に「あの方」は)憶測や思い込みでの発言が多いので(苦笑)
> 不明な事は自力でトコトン調査された方がいいですよ。

こちらからツイッター上の、例の議論に関しての追伸をさせていただきますと、泥沼の団体経営論や構造論にシフト一部に「そもそものツイッターというメディアは議論に向かないのではないか?」という自己言及的な言説も見られ、うすうす自分も感じていたことで元々推敲や承認なしに意見をアップロードできるということは、一方からすれば、特別な議論よりも一種のヒステリーの渦の質のほうばかりが目立つなと。特にリアルタイムでの言葉が流れるアップロードのスピードの質からしても議論でなく炎上向けな面あるよなあ、誤解の与えやすさなんて意味も含めてと感じ、自分も一回失敗してるのもあるし、変な言い方ですがツイッターは半分降りて使うことにしようと思いましたね。

ps.大阪に行かれるようですが、楽しんできてください!様々な意見ありがとうございました!

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EAbase887

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ビデオゲームというフィルターから俯瞰する、現代エンターテインメント総合批評
「GAME・SCOPE・SIZE」もやっております。ゲームの他に映画・アニメ・小説なども取り扱っており、興味があればこちらにも。

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