オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


ビタリの右

Category: P・M・BOXING   Tags: ---
どーもくんんチェコ風

ボクシングWBCヘビー級タイトルマッチ 
<<ビタリ・クリチコvsシャノン・ブリッグス 観戦記録>>

 それはとても見慣れた光景であるにも関わらず見たことが無い光景として映った。知らず知らずの内に、というより日本の中でのボクシングというジャンルのマス・イメージとしてあの「あしたのジョー」はじめ尋常でないストイシズムや清貧も含めた求道性を要求しがちであるし、また「はじめの一歩」的な格闘技中もっとも整備され、社会体育としての不良やいじめられっ子を矯正するような人格形成の一面を持ったスポーツとしての信頼感の高いジャンルとして認識されており、近年の日本国内での後楽園を中心に開催され、TV放映もされる世界王座戦などに目を通し、そのイメージがより強固になっていた中でのこのビタリ・クリチコの防衛戦に対してまず最初に感じたことはそれだった。

 挑戦者シャノン・ブリッグスが入場に入る瞬間に、ニックネームである「キャノン」を意識した大砲の砲弾が発射され、着弾する瞬間のモチーフとした、作りこまれた映像の中で、会場に設置された模型の巨大な大砲から爆音が轟く。対する王者ビタリ・クリチコは神経細胞の顕微鏡大による映像によって「尋常ではない反応速度によるボクシング」を行うというイメージの中でリングに向かっていった。

 現在の世界のボクシングの勢力図からトレンドに関して自分はまったくのザルで、正直言って王者クリチコ39歳挑戦者ブリッグズ38歳というのが今現在の情勢において年齢的にこれが水準なのかそれともヘビーが発掘されず高齢化した結果なのかが分かってない。「ジョージ・フォアマンが45歳にしてベルトをつかむ」という話は忌憚なく美談として受け入れるが、現在のヘビーの王者周辺の選手の年齢というのはそもそもそういうものなのか?などという疑問が思い浮かんだ。

 今回王座戦も「アメリカ人のブリッグズが王座を独占しているヨーロッパからベルトを奪い返す」という側面が語られるように、ヘビーの主要なベルトはある時期から欧州が独占しているという状況らしく、あんまりボクシングについて分かってはいない自分からするとそういうのも込みで、現在のヘビー級のメインストリームの状況などをこうして見ていて感じられる捻じれた印象は面白いとも思ってはいるが、その捻じれた印象に関して違和感と断じるか、または受け入れるかの決断を下すのはもう少しこのヘビー級周辺を見てから決めることになりそうだ。

 試合は異常なほどにシンプルな展開に終始し、さらにビタリが右を振り下ろすたびに、観客の歓声の強弱が生まれるのを聴いて、それがまた見慣れた光景であるにも関わらず見たことが無い光景の一つとして映った。かのドイツのアリーナに集まった観衆たちの、このヘビー級のボクシングタイトルマッチに掛けられた欲望は。公式の世界最高峰の権威あるスポーツの瞬間か。逆転して見世物小屋か。この光景はk-1に似ているのか。PRIDEに似ているのか。自分はそれほど、例えばWWEのビンス・マクマホンから元DSEの榊原代表の提唱するような「神の階級ヘビー級による世界最高峰の闘いの場が必要」というのは個人的には趣味ではないが、しかし日本国内で行われる軽量級のストイックで潔癖な世界戦をもって「ボクシング」だと解釈してしまっている自分の目からすると、フルラウンド、ビタリがワンツーのみを狙い、打ち続け、ブリッグズがしのぎ続けるという展開でありながら、アリーナに満員の観衆が詰めかけ試合を注視しているという光景は、もはや試合の単調さと別種の、これがボクシングの提供する「世界最高」「最強」の生み出す異形性や恍惚感の姿のように思えた。ビタリの攻撃をしのぎ続けるブリッグズという構図が、長身の白人とずんぐりとした体形の黒人という対照もあってか往年の「ミルコvsハント」に重なりはじめ、かの試合が時を越えて懐石料理化して目の前に現れているようにさえ感じた。見慣れた光景であるにも関わらず見たことが無い光景が多角的に重なっていく。これが今の欧州圏が独占したボクシングのヘビーの風景のようだ。
 
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