オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


ランペイジの入場のPRIDEテーマと、現地のアメリカ人と、衛星放送の日本人と

Category: 米国基地   Tags: ---
マンション

  UFCがいまや世界最高の舞台であることは言うまでもないが、一方でそんな最大の舞台であろうとも決して感情移入し切れない面もある。メインのランペイジの入場で鳴り響いたPRIDEのテーマに、心動かされてしまう日本人と、会場のざわめきに変化の無かったアメリカの観客という光景があった。

                           ~1~

 UFC123はここ2大会が市場開拓の契機としているだろうイギリスとドイツの時の鈍さと比べると、やはりアメリカ本土開催の時にかけられるエネルギーの方が選手の意気込みからプロモーションまでトータルで強いのだろうな、なんて思わされ、結果的に今回はスペクタクルが数多く見られる面白い大会になっていたと思う。

 特に躍進するジョージ・ソテロポロスのジョー・ローゾン戦でのパフォーマンスは素晴らしく、切れのあるボクシング技術からテイクダウン、そして、間接で決めにかかる積極的な姿勢などなどまるで所英男選手の良質な時の試合を見ているかのようで(また逆に言えば近年の所選手が解決すべき点を全て改善した仮説のようにも見えて)、ポイントゲームとUFCのつまらなさ(水に合わなさ)を批判(耐えられないから文句)しがちな現行の北米MMAの中では特筆すべき存在だと思う。とはいえライト級のトップ戦線に絡んだ場合にこうしたパフォーマンスにて緩急にある試合を生み出し、しかも勝つということはあまりにも難度が高いことには違いないのだが、UFC下部~中堅の試合ですらスペクタクルの抑制された試合が恒常的に生まれている現状、やはり貴重だと言わざるを得ない。

 フランク・エドガー戦にて完封されることで、BJ・ペンに望まれる、格闘技でしてか見られないような気迫や狂気というものまで封殺されるのではないか?という予感を残した敗戦からの、ウェルターに上げてのマット・ヒューズとのドラマチックなラバーマッチが秒殺KO勝利という鮮烈極まる結末を迎えることで、まさにペンに望まれていた光景を生むことに成功し、こうした競技力が底上げされた時代にてもはやヒクソン・グレイシーのような幻想性など持続が不可能な時代の中でのヒクソンという仮説として自分はBJ・ペンを見ているなかで、その静かな狂気性や気迫は、現在のポイントゲームとも揶揄されるUFCの評価の一端を形成するようなGSPやエドガーなどのファイターに封殺されてしまうという反復を生み出してしまうことで、格闘技に望まれる光景が現在成立し辛い現実を凝縮して見せてしまっているという意味でドラマチックで、そんな中でこうした圧巻の勝利を見せることで「まだ格闘技を信じていいのかも知れない」と思わせてくれる反復も起こしてくれるのもまたドラマチックだ。

 しかし、そのようにUFCを見る一方で、やはりこれはこの日本とは関係のない光景でもあるのかもしれないな、などと思わされる瞬間が訪れる。メインのランペイジの入場の時だ。

                 =2=

 PRIDEのテーマがいま、鳴り響くこと。その意味合いがこうして見るこちら側を動揺させるようになっているのを鑑みるに、米国MMAと日本格闘技史がギリギリで繋がれているポイントとしてPRIDEが存在することから離れられていないことに気付く。
 同時にPRIDEのテーマが流れることにこうまで動揺を受けているのと対照的に、画面の向こう側から聴こえるアメリカの観客たちのざわめきには「クイントン入場」での声援からさして変化が無かった。おそらく向こうの観客たちは今ここでこの曲をクイントンが選択し鳴り響くことの意味というのを一切加味していないのだろう。

 アメリカの観客側からしても、PRIDEというビッグブランドを通して映る、日本格闘技史というのは特に自分たちとは関係はしないのだろうと自分の動揺と画面の観客たちとの差から感じた。
 今UFCが「世界最強」のブランドを奪取した、ということに関して付きつけられていることの一つと思うのはそういう物語性や歴史性を共感できるのかどうか?であることのようにも思え、今スポーツを見る行為が細分化されCSなどに加入して専門的に競技を見ることなんかが正論であり常道のような文脈を散見するが、基本的にそれに同意するのと別に、単純な物語性だとかの感情移入のしやすさの水準というのは格闘技に限らず低下しているように感じ、代わりにファンの「競技自体をアングルを抜きにして見ろ」の声が強まってしまっているように感じる。早い話が、格闘技(に、限らず他のスポーツでさえも)の大衆娯楽性が劣化していっているというか。

 「大衆娯楽」というのを、例えばそうしたコアなファンは正統性を失った競技という悪い意味で捉えているふしもあるが、今問題なのはそういうことではないだろう。

ネオン夜中

 ランペイジとリョートの闘いは、距離を測ってチャンスを狙うというリョートの戦略に対処しながらアグレッシブに攻め込むランペイジという構図で、3Rのリョートのグラウンドでの攻め方や、ランペイジのそこでの腕十時を返そうとするときのバスターを狙うシーンから、技を解いて回避するシーンに繋がり、試合終了間際でもリョートのがランペイジにサブミッションを仕掛け続けるなどの、典型的な言い回しだが両者の魅力にあふれた試合だったと感じた。試合終了後に、ランペイジは敗者だと確信したかのようにへたり込んでいた。

 そんな拮抗した展開の結末に、ランペイジの2-1での判定勝利が告げられ、ランペイジは驚いたような表情を見せた。先の「PRIDEのテーマを使うことによって、自らの原点に戻ろうとするのでは?」の見方に乗っかって話を進めるなら、試合全体の印象点を重視した価値観だったPRIDEの頃の意識のままならば敗戦がありえた展開だったのが、ラウンドマストで判定が決まるUFCではこうした結果となった。
 穿った見方をしてしまえばこれもまた、市場価値のあるランペイジ寄りになった、なんて言えるとも思う。でも自分にはランペイジがPRIDEのテーマで入場してくることで感じた気概がそのままPRIDEを見るみたいな視点に繋がることで、日本格闘技と米国格闘技のいかんともしがたい距離感をあらためて感じざるを得ないのだった。

              >3<

 こうしたアメリカのムーブメントに関してコミットできるポイントというのは、つくづく限られてるのかもしれないなんて思ってしまう。基本的にUFC(および、北米MMA)の流れに感情移入するポイントが「UFCの日本人挑戦」みたいな典型的な海外挑戦はじめ、今年4月の青木VSメレンデスみたいな「日本人がアメリカからPRIDEで形成された最強を取り戻す」とかそんなテロリズムみたいな感覚でのものだとかそういうものになってる感があるし、また過去のPRIDEの幻影を見せてくれることで持たせているところもあるのかも知れない。
 
 自分のBJペンの評価も、そこにはかつて宇野薫を秒殺し、五味や青木らが最大の相手だと見定めている点にあって、その流れもあってかつての日本格闘技の最大の目標としてのヒクソン・グレイシーと重なるのだが、そういうコントラスト込みで米国の格闘技に繋がっている面があるのは否定できない。
 
 格闘技雑誌から一部のコアなファンまでいたずらに「競技として完成されている北米」を、自らの思想の実現として支持しているが、この米国と日本の距離感に関してはどう感じているのだろう、なんて詮無いことを考えもしてしまうのだった。
 
 単純な大衆娯楽として感情移入できるはずのものがこうして現在コアなファン限定で娯楽以上の純粋な競技性を求めるという現状は果たして進化か退化なのか?はともかく、今回のUFCの質の高さと別に、米国格闘技とはあくまで遠目で見取る対象となっているなと感じたのだった。
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Comments

こんばんは!いつもありがとうございます!ソティロパロス素晴らしいですね!自分はソティロパロスから所英男を連想したことなかったですけど、そう言われると所英男の完成形という視点は正論のように思えてきました。

今の海外ファンはPRIDEあまり知らないのかもですね。TUFからUFCにハマッたというファンが多いのかなあ。せっかくのPRIDEテーマなのに確かに盛り上がってなかったですね。自分はやっぱりあのテーマがなるとPRIDE思い出してジーンときちゃいます(笑)。
Re: H.T様
> こんばんは!いつもありがとうございます!ソティロパロス素晴らしいですね!自分はソティロパロスから所英男を連想したことなかったですけど、そう言われると所英男の完成形という視点は正論のように思えてきました。

いえいえ、コメントありがとうございます!所選手が矯正しきれないのは柔術の有無のせいか?なんてにわかなことを考えてしまいました(笑)

> 今の海外ファンはPRIDEあまり知らないのかもですね。TUFからUFCにハマッたというファンが多いのかなあ。せっかくのPRIDEテーマなのに確かに盛り上がってなかったですね。自分はやっぱりあのテーマがなるとPRIDE思い出してジーンときちゃいます(笑)。

 TUFファーストシーズンのグリフィンVSボナーが向こうのMMAのベストに選ばれることが少なくない以上、こういう選手のリアリティーショーによる成長物語からUFC本戦にシフトしていった人も多いでしょうね。アメリカはいかにしてUFCの盛り上がりに繋がったのか?は向こうのボクシングの歴史とも関係あるんじゃねえかなあと静かに考えてもいます。それにしても、UWFのテーマだったりと日本格闘史は強い意味を抱えたテーマ曲をいくつか擁していますね(笑)

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