オウシュウ・ベイコク・ベース廃墟


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激情と器・逆境と物語

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ライツ

 WBCフェザー級タイトルマッチ
<<長谷川穂積VSフアン・カルロス・ブルゴス 観戦記録>>

 格闘技の中でボクシングこそが、歴史と、その中で醸成された権威性に裏付けされた、興行格闘技の中で「競技としての格闘技」というものの極北だと思われ、特に日本国内におけるボクシングの視点はその中でさらに純化されたもので完全に興行上の仕掛けというものが度外視された純粋な試合のみで成立させていることにより、世間的に最も穿った目線やエンターテインメントといった概念を排除した、求道的な競技として受け入れられるフォルムのものとなっている。

 近年の国内のボクシング事情は亀田三兄弟の登場などを代表にそうした日本のボクシングのあり方に破綻がきていることを示す一方で、日本人が漠然と見て見ないふりをしている現在のボクシングの権威も歴史もとっくに賞味期限が切れていることを逆説的に発覚させることで神経を逆撫でさせる、亀田のパフォーマンスと対照的に長谷川穂積選手の精度は、この日本人の中に漠然としてあるボクシングという競技の求道的なチャンピオンというコンセンサスのなお先をいくほどのものとなっていったように思う。

 「一般に伝わる格闘技」というものを考えてものすごく単純に誰もが提案するのが「アグレッシブに闘うこと」「KO・一本を目指すこと」あたりを中心として、過剰な煽り方や話題性優先のマッチメイクやパフォーマンスといったやり方が否定されがちになると思うが、長谷川選手の4月のモンティエル戦での王座陥落までのバンタム級での数々の防衛戦で見せた鮮やかなKO勝利から察せられるものとは、決して先の単純な(自分が想定してる)「一般に伝わる格闘技」のイメージに当てはまっているにも関わらず、アグレッシブな闘いを演じることで生み出されるカタルシスと真逆のストイシズムの局地を感じさせるものだった。

 これは積極的に相手を打ちにいく強打の持ち主である、内山高志選手の明快なファイトスタイルによるKOとその時の長谷川選手のスタイルと比較して、長谷川選手から生み出されるKOというのは意識して生まれたものではなく、スタイルの研鑽の果てに完成された形に相手が吸い寄せられることで結果的にKOに繋がったように見えた。
 普通豪快な強打で相手を打ち倒すスペクタクルの最たるものであるに関わらず、長谷川選手のKO劇の静かな印象というのはそのファイトスタイルの洗練の極致ゆえだと思っていた。背景にバンダムを維持するための過酷な減量の厳しさも伝え聞かれ、いよいよ階級を変更して王座挑戦か、と思われた矢先に、モンティエル戦での壮絶なKO負けが訪れ、ここで生まれたKOはまるでMMAの打撃戦で数多く見られるような一撃が当たることによってあっさりと優勢が覆されてしまうという、近年のボクシングからではほぼ見られないと思われる類の衝撃的なものとして映った。


 長谷川選手と対峙する、メキシコのブルゴス選手との体格差は明らかだった。これは素人目線で恐縮ながらフェザー級への階級変更と別にもともとの身長差が見とれ、そこから簡単には攻略できないだろうという予感、モンティエル戦で見せてしまった洗練と共にある崩れやすさという予感が、階級変更での王座戦の不安さに重なっていく。

 だが、そんな逆境や不安さが見える中で展開された長谷川選手のファイトは、今まで見てきたような洗練を越えた、明らかな逆境を激情で覆していくという姿に見えた。最初積極的な打ちあいはブルゴスとのリーチ差によって相手に距離を作られてしまう前に中に入っていくことで撹乱し、ペースを作らせないようにする戦略なのだろうかと感じたが、ラウンドが進むたびに明らかな強打の空振りという、これまでの防衛戦で絶対に見られなかったシーンを見せたあたりから、長谷川選手がこの試合に対して向かっていく気概が全く別のものであることに気付く。

 それはTVで繰り返される「最愛の母親の死」というフック以上に感情移入してしまったポイントに、敗戦からの復帰戦、階級を越えた王座戦という背景に加え、そうした逆境の境遇をそのまま象徴化したような長身の体格のブルゴスと、真っ向から向かい合ったシーンは、否応なしに現在逆境にある時代の気配に呼応しているかに感じた。
 「不況下で逆境にある時代に対して真っ向から向かい合うこの試合がカタルシスに繋がった」なんてあまりにも単純すぎる見立てだけど、そもそもの格闘技もいつのまにこんな単純な見立てをはねのけるような世界になったのか?などというほどの、FEGのPUJI資本提携を象徴に経営上での業界の縮小に対してメディア・選手・そしてファン全てがそうした状況に対して真っ向から対峙するのかと思いきや、最悪なことに小さくなった世界では小さくなったなりに関わる全ての人間の器さえも小さなものになっていくという陰湿な自体を展開しており、シルバニアファミリーのおもちゃのコップくらいの器のなかであら探しをしあうなんで糞にも劣る現状が多々見られ、信じがたいものとなっていた。
 
 思えば今年心振るわされる試合は「長嶋のK-1日本トーナメント」「三崎VSサンチアゴ」そして「長谷川VSブルゴス」など、おおむかいから日本の逆境に関してコンテクストを自覚していたのは「K-1は絶対に潰しません!」と発言した長嶋自演乙くらいで、三崎の近年のGURABAKA脱退からの逆境、そして今回の長谷川選手の王座からの陥落と、肉親の死という逆境という個人的な部分が、リング上での苛烈な試合となり昇華されることで同じく逆境の時代の観客に繋がることでカタルシスとなる、ほとんどが逆境と真っ向から闘うことを演じた試合ばかりだった。
 
 一つの時代の終わりと感じるこの2010年においては名勝負が続出したとも思うが、それはそうした背景や気分を背負っていることが大きいと感じている。自分は振り返って逆境にある時代こそ格闘技というのは真向かいから対峙するものなんて実に浅い青臭さ極まることを考えていたが、結果生まれた光景は逆境の中で業界が縮小すると同時に選手から運営、メディアまで全ての人間性の器は縮小していくというものだった。正直言ってそれが2010年の平均的な風景のあり方で、巨大な逆境に対して自覚的になるどころかどんどん浅くなっていく現状で、「逆境と真向かいから闘い、そして勝つ」という物語のハードルは、逆境に自覚的な自演乙のザンビ戦を見てもかなり高く、それだけにクリアした瞬間のカタルシスというのは涙がにじむほどに心揺さぶられる。

 一歩でも違っていればKOで敗北していたかもわからないブルゴスとの試合を制した長谷川選手の姿を見てそう強く感じた。今UFCが盛り上がっているが、一番の繋がらなさは、結局のところそれは観客の人生と遠い所にあるし、観客の物語としてUFCと強く繋がれる瞬間は、限りなく他スポーツの日本人の海外挑戦同様の質である岡見勇信や、ノゲイラやシウバなど数多くの元PRIDEファイターが移籍したケースよりも、真の意味でPRIDE日本人エースの物語を背負った、五味隆典を通してだとも思う。それ以外でUFCと繋がる瞬間というのはいたずらな「競技性」という言葉での評価を代表に非常に限定されたものであり、日本人の観客の実人生とは遠い地平にあることは確かだ。

 人間の器が総出で縮小していく一方として、この逆境と闘う物語を生んだ闘いというのが鮮やかに映る。事態は構造的な問題に及んでおり、無論逆境からの勝利というものが簡単に事態の好転を意味することはない。だがしかし、これが一時のものだとしても、逆境との闘いというのが今の気分として、感激と悲哀が入り混じった涙をさせるのは確かだった。
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Comments

競技性なんて実はちっさい事、それをいったら前回KO負けした長谷川が2階級上げ、正規王者を押しのけブルゴスと王者決定戦を行うのは筋の通らない事です

リング上でなにを見せるか

亀田を持ち上げざるを得なくなるまで落ちぶれた日本ボクシングは、なぜここまでになってしまったかよく考え

長谷川、内山を中心にもう一度立て直してもらいたい、殻を破ってほしい

同じ事を繰り返せばまた落ちぶれる、勝つだけでは、世界チャンピオンになるだけではダメなんだと、弱いやつを狙ってチャンピオンになっても何も訴えかけるものはないんだと
Re: ちす様
コメントありがとうございます。ホントに同意です。
自分自身ボクシングは格闘技を見始めるのと同じように日は浅いのですが、当初はボクシングもこういうものなのだろうと考えていたのが、知っていくほどにそもそもの権威や歴史というものがどれほどこの競技を保証しているのだろうと思うようになりました。特にここ10年の歴史を振り返ってみても。

そういう意味でもこのように物語性を発揮した試合というのは、貴重だと感じさせられます。

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ビデオゲームというフィルターから俯瞰する、現代エンターテインメント総合批評
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